あんさつ。 | ナノ

22

車で何処かへ連れて行かれる中、カエデちゃんがいないことに気付いたのは有希子ちゃんだった。

神「…結花ちゃん…元気出して…?赤羽君ならきっと大丈夫だから、ね?」
『…う、うん…』
神「…そう言えば…茅野さんがいない…。捕まっていないということは、無事なのかな…?」

泣いている私を慰めている最中、本来ならもう一人いる筈の慰め役(?)が見当たらないことに気付いた有希子ちゃん。

不良「なにコソコソ話してんのかなー?ま、どの道逃げられる訳ないけど。
…去年の夏ごろの東京のゲーセン。これ、おまえだろ?」

スッと差し出された携帯に映っていたのは、今とは全く別人の有希子ちゃん。
派手な服を着て、アクセサリーいっぱいつけて、髪が茶色い…けど間違いなく有希子ちゃんだ。
不良もまさか、名門中学校の生徒がこんな恰好で遊んでいたなんて思わなかったらしい。

不良「ここなら騒いでも誰も来ねぇな」

車から降ろされ連れて来られたのは、閉鎖された古いバーのようなところ。不良たちは、私達とは少し離れたカウンターの所で酒とタバコを片手に騒いでいる。

『有希子ちゃん、さっきの写真…』
神「…うん。うちの父親が厳しいの、知ってるよね」
『うん。すごく怖かったから、覚えてるよ』

前に一度、会ったことがある、有希子ちゃんのお父さん…。有希子ちゃんと一緒に買い物に出かけて、偶然会った。「こんなところで何してる!早く帰って勉強しろ」って、街中なのに人目も気にせず怒鳴り始めて…。その時買った物の中に、参考書とかがあったからそれを見せた。「一緒に買いに来たんです」って。
…説明(言い訳ともいう)をしたのは私一人で、有希子ちゃんはお父さんの顔を見るなり怯えた表情のまま、一言も喋らなかった。

神「…父親はね、私に良い肩書ばかり求めてくるの。…そんな肩書生活から離れたくて…」
『…そっか。じゃあ今度は私もああいう服、着てみる』
神「え?」
『二人であんな感じの格好して、今度は二人でゲーセン行こ?』

えへへっと笑うと有希子ちゃんはキョトンとしてたけど、すぐに笑ってくれた。

不良「いーねー。俺らも混ぜてよ?」
『Σ!?』
神「!!」

いつの間にか不良たちが、私たちの目の前に立っていた。
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