あんさつ。 | ナノ

21

カ「へー。祇園って奥に入ると、こんなに人気無いんだ」
神「うん。一見さんお断りの店ばかりだから、目的もなくフラッと来る人もいないし、見通しが良い必要もない。だから私の希望コースにしてみたの。暗殺にピッタリなんじゃないかって」

そう言ってにっこりした有希子ちゃん。…流石だなぁ。

『有希子ちゃん流石だね。詳しく調べてるのも凄いけど、暗殺のこともよく考えてて偉いよ!』

有希子ちゃんの手を握り、グイッと顔を近づけた。

神「結花ちゃん…近い、近いよ(汗)」
『あ、ごめん…』
業「結花、ちょっと落ち着いて、ね?」
『はい…』

有希子ちゃんに苦笑され、カルマくんによってそっと引き離される。
恥ずかしくなって下を向くと、カルマくんが頭をポンポンと撫でてくれた。

カ「あはは!結花、顔真っ赤だよ」
渚「神崎さんを褒めてた時、目がすごくキラキラしてた!」
『う〜…』

…みんなに笑われた。
は、恥ずかしいよぅ…。

?「…ホント、うってつけだ。なんでこんな拉致りやすい場所歩くかねぇ」
『!?』
カ「!!…え?」

後ろから歩いてきた学生たち。…見るからに不良っぽい…。

業「結花…」

小声でカルマくんに呼ばれ、さりげなく後ろに庇われる。
少し怖くなって、カルマくんの制服の裾をそっと握った。

業「…何お兄さん等?観光が目的っぽくないんだけど」
不良「男に用はねー。女置いておうち帰んな」

…次の瞬間、カルマくんの行動は素早かった。
一瞬のうちに、不良の一人を電柱に叩きつける。
だけど…
   ゴッ

『っ!カルマくん!!』

別の男がカルマくんを後ろからパイプで殴りつける。
ドサリと倒れたカルマくん。

『カルマくん!ねぇっ!カルマくんっ!!』

どうしよう…どうしよう、どうしよう…。カルマくんが起きない…。
脈がどうとか、息してるかとか、色々確かめればよかったんだけど…“あの”カルマくんが倒れた事で気が動転している私は、ひたすらカルマくんの体を揺することしかできなくて…。

不良「騒ぐな!来い!!」
『カルマくん!カルマくんっ!!』

引き摺られ車に押し込められても、これから自分がどうなるとか考える余裕はなくて、ただただカルマくんが心配だった。
腕は縄で縛られているため頬を伝う涙を拭うこともできず、いつもなら自分で拭うより先に滴を拭き取ってくれる温もりの主の無事を祈るのみ…。
prev|next

[ text toptop ]