あんさつ。 | ナノ

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神「…結花ちゃん…?なにか嫌なことでもあった?みんなびっくりしてるよ」
『!有希子ちゃん、お疲れさま。……実はね――…』
神「…――へえ…カルマ君がそんなことを…」
「「「(((神崎さんまで怒った!?)))」」」

どうお仕置きしてやろう…と私がひそかに燃えていると、戻ってきた有希子ちゃんに声を掛けられる。事情を話すと有希子ちゃんは黒い笑顔を浮かべた。普通に笑っているように見えるけれど、よく見ると眉間や表情筋に力が入っているのがわかる。

神「それなら、私にいい考えがあるの。でも今は…この戦いを見届けよう?」
『…うん、そうだね』

…不利だった青チームは、渚くんの活躍で一気にその差を縮めた。そうして結局はさっきと変わらない、カルマくんと渚くんの一対一の勝負になる。力では圧倒的に渚くんが不利。暗殺の能力ならカルマくんの方が不利。けれど渚くんの手の内を知っているという点を考慮すると、総合的にはやはり渚くんが不利なのかもしれない。

殺「…心配ですか?」
『…カルマくんの方が力は強いと思いますよ?』
殺「ええ、だから聞いています。…時雨さんは優しいですから。どちらの怪我も、心配しているんでしょう?」

さすが、殺せんせー。もしかしたら私が顔に出していただけかもしれないけれど。

『…私、カルマくんのこと好きです。…でも、一つだけ好きになれないところがあるんです。カルマくんが、人を殴っているときの顔…まだ、数えるくらいしか見ていないけど、あの顔を見ていると私の好きなカルマくんがいなくなってしまったような、目の前のカルマくんが別人になってしまったような、そんな気持ちになるんです。まして、そんな顔でカルマくんが友達を殴ってる姿なんて、見たくない…』

一生懸命なカルマくんの姿は好き。でも、暴力的なあの瞳の中には、私は映っていないんだと思ってしまう。…実際、映っていないんだと、さっき知ってしまったわけだし。

殺「……目を逸らさないでください。確かに彼は、周りが見えなくなってしまうことがある。ですが、カルマくんが時雨さんを大事にしているのは、このクラスなら誰もが知っている事実です」
『…!』

殺せんせーに諭され視線を上げると、渚くんがカルマくんに肩固めを決める瞬間だった。

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