あんさつ。 | ナノ

135

『……、』

ここ、どこだろう…?
ぼんやりした意識で、視界に映った天井を見つめる。

浅「…目が覚めたかい、結花さん」
『!浅野、くん…?私、裏山で…』

隣から声がして振り向くと、浅野くんは優しく微笑んだ。
ここは…本校舎の保健室かな。
白くて清潔な室内に並べられたベッドのうちの一つに、私は寝かせられていた。

浅「もう少し寝ていた方がいい。頭も打っていたかもしれないからね。痛みや違和感は?」
『…大丈夫…。…あの、』
浅「…赤羽から、連絡があったんだ。裏山に来い、E組の人間に姿を見られるな、場合によっては結花さんを連れて行ってもらうことになるかもしれないからその用意もして来い、これはテスト勝負の時の命令だ…とね」
『!』

カルマくんがあの時メールしていた相手は、浅野くんだったんだ…。でも、私を連れ去る指示を出すなんて、どういうつもりだったんだろう。

浅「…赤羽の所へ戻りたいかい?君のことを考えられず力任せに振り払った…僕はアイツが赦せない。…僕に他人のことを言う資格はない。それでも…君が赤羽の元へ戻ると言うのなら、僕は君を何としてでも止めるよ」

すごく真剣な目で私を見つめる浅野くん。…やっぱり変わったね、浅野くん。上辺だけでなく、心から心配してくれているのが伝わってくる。
もしあの時、浅野くんが今みたいに心配してくれていたら…私はカルマくんと出会っていなかったかもしれない。

『…ありがとう、浅野くん。でも、私はどうしてもあの教室に戻らなきゃいけないの。今クラスで大事なことを決めてる最中で…私はまだ答えを出せていないけれど、それでも戻らないとダメだと思う。私は、E組の生徒だから』
浅「…どうやら、止めても無駄みたいだね。わかったよ、結花さん。でもせめて…あの校舎まで送らせてほしい。君は気を失ってここへ運ばれたんだから」

浅野くんは一つため息を吐いて立ち上がる。
その表情は、微笑んでるにも拘らずどこか寂しそうだった。

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