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やっと一段落…そう思っていた矢先に、殺せんせーを狙って誰かが狙撃してきた。
その先に立っていたのは、シロという人。
変声機を外し覆面を取ったその顔に、殺せんせーは見覚えがある様子だった。
村「…それよりこっちだ。目ェ覚ましたぜ」
変な呪いの言葉(?)を呟き去って行ったシロ。どうでもいいと吐き捨てた村松くんが、カエデちゃんが起きたことを教えてくれる。
『カエデちゃん…!』
渚「茅野…平気?」
カ「…うん」
自分を馬鹿だと自嘲したカエデちゃんに、渚くんはカエデちゃんもクラスの仲間だと言った。
私もそう思う。どんな目的であれ、一緒に過ごした時間に変わりはない。一緒に笑い合った時間が、カエデちゃんの中でも同じように楽しい時間であったと信じたい。
カ「…うん。ありがと…もう演技やめていいんだ…」
カエデちゃんは泣いてた。
演技じゃないカエデちゃんの表情を、初めて見たのかも知れない。
磯「…話してください。どんな過去でも…真実なら俺等は受け入れます」
磯貝くんの言葉を受けて、ゆっくりと殺せんせーはため息を吐いた。
過去の話はしたくなかったと。それでも話さなければならないと言った。私たちの信頼を、絆を失いたくないから、と。
殺「夏休みの南の島で、烏間先生がイリーナ先生をこう評価しました。「優れた殺し屋ほど万に通じる」。的を得た言葉だと思います。先生はね、教師をするのはこのE組が初めてです。にも関わらず、ほぼ全教科を滞りなく皆さんに教える事が出来た。それは何故だと思いますか?」
『…!』
みんながハッとする。
カルマくんは素早く私に振り向いた。
竹「…まさか」
殺「そう。2年前まで先生は…「死神」と呼ばれた殺し屋でした」
業「…結花の勘は正しかったんだ…」
渚「…勘?」
渚くんが聞き返すと、カルマくんは私の表情を窺った。
私は何と言えばいいのか分からず、黙って目を伏せて小さく頷く。
業「…結花が、言ったんだ。“死神”の事件のときに…「“死神”って、世代交代とかあるのかな」…って。結花は疑ってた。あの“死神”は、初心者みたいなものだったんじゃないかって」
みんなが息を呑むのが分かった。
そっと顔を上げると、殺せんせーだけが穏やかな顔で微笑んでいた。