あんさつ。 | ナノ

127

私の目の前には、学年で二位を取った浅野くん。私の後ろには、学年でトップを取ったカルマくん。
………教室の黒板に貼りだされた期末テストの順位、私の名前は上から三つ目に乗っていた。得点は、480。
返ってきた答案用紙には、あの数学の問題にのみ「×」がついていた。

『…浅野くんの勝ちだよ。私の順位は浅野くんより下だった。だから…』
浅「…僕の負けだ」
『…え、?』
浅「約束は約束。一つだけ君の言うことに従おう………赤羽」
『え?』
業「それなんだけど」
『え、え?』
業「もう少し待っててよ。卒業する前までには、ちゃんと必ず何か命令するからさ」
『えええぇぇ!?』


―――――
―――



業「黙っててごめん、結花」
浅「驚かせてしまってすまない、結花さん」

カルマくんは若干楽しそうに、浅野くんは真摯な態度で、私に謝ってくれた。
さっきの浅野くんの言葉は、私ではなく私の後ろに立っていたカルマくんに向けられたもので、実は浅野くんは、カルマくんとも私と全く同じ約束をしていたらしい。
ついでに、私との勝負はどちらもトップではなかったから無効だと言ってくれた。

浅「あの時は思わず笑ってしまったよ。赤羽も結花さんと全く同じことを言い出すんだから」

浅野くんが私を家まで送ると言いだし、カルマくんと浅野くんの険悪ムードに挟まれながら帰ったあの日、私が家に入ったのを見届けたカルマくんが、浅野くんに賭けをしようと言いだしたそうだ。

浅「…そう言うわけで、決着はついたことだし、僕は帰るよ」
『あ、待って浅野くん!』

くるりと背中をこちらに向けた浅野くんを呼びとめる。

浅「?」
『…頬、どうしたの?』
浅「…っ//」

会った時から気になってはいた。
浅野くんが頬に、大きな絆創膏を貼っている。
私は一歩距離を詰めて、浅野くんの頬にそっと手を添えて首を傾げた。

浅「っ何でもない。またね、結花さん」

いつもよりほんの少しだけぶっきらぼうに別れを告げて、浅野くんは足早に去っていってしまった。

『…?』
業「…結花…浅野の半径3m以内に近付くの、禁止ね」
『Σ!?』


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