あんさつ。 | ナノ

121

いくらクオリティが高いといっても、所詮は中学三年生。
まだ、15歳。
…それなのに。
自分の父のことを「怪物」と言い、ゴミクズと言って蔑む相手に頭を下げる。ただでさえ、色んな人達のプレッシャーを一身に受けているのに…。
どうして神様は、こんなに残酷なことを、こんな子供にさせるのだろう。

『…っ…、浅、野くんっ…何で……』

…一度だけ、浅野くんの家に行ったことがある。
…冷たい、冷たい家だった。
浅野くんはさっき「それが僕等親子の形だ」と言ったけれど、私にはあの家が一つの家族の暮らす空間には思えなかった。

浅「…君は優しいね。僕は君に酷い仕打ちをしたというのに、君は僕を想って泣いてくれているんだろう?」

浅野くんはポケットから出した皺一つないハンカチで、私の涙をそっと拭ってくれる。
ハンカチからは、懐かしい匂いがした。

浅「心配いらないよ。僕にとってはアレが父親で、普通のことなんだ。ただ、最近少し調子に乗っているから懲らしめてやりたい。それだけのことだ。君にとっては考えられないかもしれないが、僕にとってこれは親孝行に過ぎない。…だから…そんなに泣かないで、結花さん」

…時々思う。
浅野くんとカルマくんは、実は似た者同士なんじゃないかと。
だって、今私の目の前で困ったように笑う浅野くんは、さっき私を送り出してくれたカルマくんと同じ表情をしている。

浅「…さて、涙は引いたようだね。家まで送るよ。…携帯を貸してくれるかい?」
『…?』

私が不思議に思いながらも、にこやかに手を差し出す浅野くんに携帯を渡すと、浅野くんはササッと画面を弄ってから耳に当てた。…電話…?

浅「あ、赤羽か?結花さんは僕が責任を持って送るから、君はもう帰っていい」
『Σ!?ちょ、浅野くん!?』

…ブチッと切られた通話。
清々しいほど爽やかに笑う浅野くん。
…この後、道で待ち伏せしていたカルマくんと浅野くんのバトルが勃発しました。


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