あんさつ。 | ナノ

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浅「単刀直入に言う。あの怪物を、君達に殺して欲しい」

…理事長の教育方針を殺してくれと、浅野くんは言った。
今の自分の父親は間違っているから、自分の仲間が壊れてしまうから、だから…。

浅「――だから、どうか…正しい敗北を、僕の仲間と父親に」
『………っ』
業「え。他人の心配してる場合?1位取るの君じゃなくて俺なんだけど」

…カルマくんの一言で、場の空気ががらりと変わる。挑発的な態度で浅野くんをイラつかせるカルマくんに、寺坂くんが茶々を入れ、カルマくんが寺坂くんをシメている間に磯貝くんが真摯な対応で浅野くんに向き合う。

業「余計な事考えてないでさ、殺す気で来なよ。それが一番楽しいよ」

にやりと笑ったカルマくんに、呆気にとられていた浅野くんは、次の瞬間にはいつもの表情になっていた。

『………』
業「…結花…浅野に言いたいことがあるんじゃないの?待っててあげるから行って来なよ」
『………うん、』

浅野くんと別れたあともずっと黙っていた私に、カルマくんが困ったような顔で笑いかけてくれる。…私が何かを我慢していたことに、カルマくんは気付いていたみたいだ。こくりと頷くと、くしゃりと頭を撫でてくれる。

『…っ浅野くん…待って…!』
浅「!…結花さん…どうかしたの?」

踵を返して方向転換し、走って追いかけた先には浅野くん。私の声に驚いたように振り向いた。
…もう、いつもと変わらない表情をしている。だけど…私はさっきの浅野くんの表情を忘れられない。
あんな浅野くんの顔、初めて見た。

浅「結花、さん…?泣いてるの?」
『…っ、』

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