あんさつ。 | ナノ

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この死神のアジトというのは、国が洪水対策で造った地下水路と繋がっているらしい。
地上の操作室から指示を出して近くの川から水を流せば、私たちはその水圧により対先生物質入りの檻に押し付けられ、殺せんせーはきっと豆腐を包丁で切るみたいに簡単にバラバラになる。そして私たちも、ほぼ確実に死ぬ。
私たちが殺せんせーと同じ檻に入れられているのは、死神の計画の一つらしい。殺せんせーは私たちのことを気にして暴れないから、と。

烏「イリーナ!!おまえ、それを知った上で…」

烏間先生はイリーナ先生を問い詰めたけど、イリーナ先生はプロとして結果優先で動いただけ、と返す。
烏間先生が焦った顔で言葉に詰まると、殺せんせーは何故か「ヌルフフフ」と笑いだした。
曰く、対先生物質を克服したとか…。
ドヤ顔の殺せんせーが出したのは…舌。地道に檻を舐めていれば、半日くらいで溶けるらしいけど…いや、遅いよ。

死「言っとくけど。そのペロペロ続けたら全員の首輪爆破してくよ」

うん。だよね。
じっくりゆっくり檻が溶けていくのを、死神が大人しく見ているとでも思ったのだろうか…。

死「…さて、急ぐか。他にもどんな能力隠してるかわからない」

死神はイリーナ先生に声をかけてここを立ち去ろうとする。
ああ、私たち、死んじゃうのかな。
何となく、そう思った。
…でも。
   ゴッ

烏間先生が死神を殴る。

烏「……日本政府の見解を伝える。27人の命は…地球より重い」

…国の人間――しかも、こんな重大な任務を任されるほど偉い人――でも、一緒に生活していれば、それなりの情というものが湧くのだろうか。
…だとしたら…仲良くしていたはずなのに、簡単に手のひらを返した私の元クラスメイト達はなんだったのだろう…。
スーツのジャケットを脱ぎ捨てる烏間先生を見て、そう思った。
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