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『カルマくん!よかった、無事で…!!』
戻ってきたカルマくんに走り寄って抱きつく。
…本当は、A組に戻るよりもカルマくんが怪我をする方が怖かった。
業「ちょ、危ないって。あの外国人よりも結花の方が強いんじゃないの?」
私が抱き付いた勢いでよろけたカルマくんは、冗談交じりに笑って頭をわしゃわしゃと撫でてくれる。
『あんなに巨大じゃないもん!』
業「そう?ここから見たら結花の方が大きい…」
『それは遠近法でしょ!?』
むぅ、と頬を膨らませば、「拗ねないでよー」と空気の入ったそこを突かれる。
前「おい浅野!!二言は無いだろうな?」
『!』
…浅野くん…。
業「え、結花!?」
校舎から出てきた浅野くんに確かめる前原くん。
私はカルマくんを見つめその手をぎゅっと握ると、そっと離して前原くんの前を通り抜ける浅野くんの方に足を向けた。
『…浅野くん』
浅「!、結花さん…」
『…ジャージに血が付いてるよ。また、理事長に何かされたの?』
浅「!…まあ、ね。…ありがとう」
ハンカチを差し出せば、お礼を言って受け取るものの、浅野くんはそれを使おうとはしなかった。
『………浅野くん、』
パンッッッ
浅「…!」
「「「!!??」」」
私が浅野くんの頬を叩いた音が、片付け途中の校庭に響く。誰も、一言も声を発する人はいなくて、息をのむ音だけが皆の、周りにいた人の唯一の反応だった。
『…私を本校舎に戻したい気持ちは分かったよ。浅野くんが、どれくらい本気なのかってことも。
…でも、私は戻らない。
竹林くんも言ってたけど、A組なんかよりずっと、今のクラスは居心地がいいの。浅野くん達が私から奪ったものを、皆は取り戻させてくれたから。
…ビンタは、皆を危ない目に遭わせようとした仕返し。
次からは、私に直接来て。皆を巻き込むことは、許さないから』
言い終えると、浅野くんに背を向けて歩き出す。
時間が止まったかのように、誰一人、身動き一つしなかった。
業「…結花、手痛かったでしょ?ほら、出して」
我に返ったカルマくんが、私の手が震えているのに気付いてそっと包んでくれる。
浅「っ…僕は諦めないよ、結花さん!僕には君が必要なんだ」
…背後からした声に振り向くより早く、すぐ近くから言い返す声があった。
業「結花は渡さない。結花を傷つけたあんたを、俺は許さないよ」
…このことは、教室に戻ってからも暫く話題の中心だった(汗)。