あんさつ。 | ナノ

92

夜。
次に選ばれると思われる建物の敷地内にフリーランニングを使って忍び込んだ私たちは、明らかに泥棒の格好をしている殺せんせーと、黄色のヘルメットを被った大男を見た。
殺せんせーが動き出した大男を捕え、そのヘルメットを取ると…

カ「あの人…確か…烏間先生の部下の…」

…私達も見たことのある顔が、そこにあった。
殺せんせーも驚き固まっている。…その隙を狙って、殺せんせーに襲いかかる影があった。

寺「イトナ!!」

殺せんせーがいた場所は白い布で囲われて、戦っている音はするけれど中の様子は見えない。
シロ曰く、「対先生繊維の強化布」だそうで、殺せんせーにはもちろん触れない。イトナの攻撃が当たっても破れない、と。
夏休みの合宿の時の私たちの作戦からヒントを得た戦法らしいけど…
…まあ、そう簡単に殺せんせーは殺せないよね。
夏休みの合宿で学んだのは、殺せんせーも同じ。何をやったのかはよく見えなかったけれど、布の囲いの中が強く光って…

業「結花っ!!!」

建物の窓ガラスが割れるくらいの強い衝撃を感じた後、私を呼ぶカルマくんの声が聞こえるのとほぼ同時に、視界は真っ暗になる。
…あ、カルマくんの匂いだ。

業「結花…無事?」
『うん。ありがとう、カルマくん』

私を庇うように抱き締めていたカルマくんは、そっと体を離して私の顔を覗きこむ。
私が笑ってお礼を言ったその時…。

イ「い…痛い、頭が痛い…脳みそが裂ける…!!」

尋常じゃない痛がり方をして呻くイトナ君。シロはそんなイトナ君を置いて行ってしまった。イトナ君は、頭を押さえ顔を歪めながら、シロを追って飛び去って行った。
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