仁王雅治×丸井ブン太/事後
情事後の独特のけだるさにうつらうつらしているとギシリ、とベッドが鳴った。
目を開けることさえだるく、特に反応もせずに寝転がったままでいる。
すると仁王は俺が寝ていると思ったのか頭を撫でてきた。
普段は子供扱いするなと嫌がるからだろう。
仁王が子供扱いしようと思ってるわけではないのはわかっているのだが。
今も反抗しようかと思ったが、そうする気力も起きずされるがままになっている。
それに、そうして頭を撫でられるのは存外気分の悪いものではなかった。
ほどなくして気が済んだのか仁王も俺の隣に潜り込む。
向かいあって、自分の胸に俺の頭を押し付けるように抱きしめて。
「ブンちゃん…寝とる?」
霞がかかったような脳内に聞こえてきた声に、俺は応えない。
常より深刻そうなその声に反応することに、恐怖した。
「俺のエゴだからブンちゃんに聞かせとうない、じゃけん、寝とってよかった」
じゃあなんでお前は今からそのお前のエゴを話そうとするんだ。
俺が起きてるのをわかって言っているのか?
何を話そうとしているんだ、仁王。
そんな声で、何を。
覚醒したくもないのに、俺の頭の中の霞は仁王の言葉によって取り払われてしまう。
だが空寝のふりをすることに決めた以上、結局俺は為す術も無く仁王の言葉を聞くしかないのだ。
「この間テレビでやっとったんよ。どうやって性別がわかれるか。最初はみんな、女なんやって」
うん、知ってるよ仁王。
そんで男性ホルモンの浴びるか浴びないかで、そのまま女になるか、男か、が決まるんだ。
受精の時点で結構性別は決まってて、男なのに男性ホルモンを浴びないと女らしくなるって説もある。
確証のない話だけど、男性ホルモンを浴びないと薬指より人差し指が長くなって、それは同性愛者が多いとか。
よく知ってるよ、きっと、仁王より。
「ブンちゃんはなんで…男に生まれてきたんやろね。そのまま女として生まれたらいけなかったん?そしたらこんな苦しい思いせんですんだのに、な…」
ごめん、ごめんね、仁王。
俺が女だったら仁王はこんなに苦しまないですんだのにね。
俺も痛いぐらいに願ったよ、女だったらよかったのにって、何度も。
俺だって苦しいんだよ仁王。
叶わない願いだって気付いてるから余計に。
それでも仁王の願いならなんでも叶えたかったよ。
仁王の願いが勝手だなんて、思わない。
俺だって願った事だから。
俺が男だったのが全部悪いんだから。
仁王がそう思ってるんじゃないかって事も薄々気付いてたよ。
でも、でもね、仁王、
「ブンちゃん…男のブンちゃんはいらん、女のブンちゃんが欲しいんじゃ……」
それは言わないで欲しかったよ。
私が起きているのに気付いていながら言っているのなら、貴方はなんて酷い男なのでしょう。
気付かないで言っているのなら、貴方はなんて罪深い男なのでしょう。
どちらにせよ私は貴方を愛しているから責める事なんて出来ないけれど。
きっと貴方はそれさえもわかって言っているのでしょう。
そして私は今日も神様を呪って枕を濡らす。
▽
前サイトから。
におちゃんがぶんちゃんがおきてる事に気付いてるかどうかは皆様の想像にお任せします。
2009.05.24
2011.11.03 修正