平和島静雄→折原臨也/来神/企画「はつ恋」様提出



最悪だ。
最近変なウジ蟲に付きまとわれるわ、妙に絡まれるわ、糞なウジ蟲に付きまとわれるわ、ラジオにアイツは出ないわ、屑なウジ蟲に付きまとわれるわ、新羅は益々解剖を迫ってくるわで良いことがない。
今だってちょっと外に買い物に行ったらこの様だ。
勿論怪我はしちゃいないが服はボロボロ、体は汚れて帰るに帰れない。
家族が寝付いた頃に戻るか。
しばらく時間を潰そうと夜なのに明るい池袋の街をうろつく。
この見た目だし制服じゃないから補導されることもないだろう。
さて、どこに行こうか、と悩むが当てもないしそもそも騒がしいのは好きじゃない。
偶には夜の散歩と洒落こもうかと明るい大通りを外れて小道へ入り近くの公園に向かう。
静かな空気に綺麗な夜空の下をそぞろ歩くという珍しく平穏な時間に自然と機嫌も良くなる。
いつのまにか微かに鼻歌がもれていたが人もいないしいいだろう。
そうして少し歩いてこじんまりとした公園に辿り着く。
ブランコにでも乗ろうか、飲み物でも買ってくればよかったなと考えながら公園に踏み入るとどこからか声がする。
小さな公園だからこんな時間に人がいることはないと思っていただけに大誤算だ。
しかしここで引き返すのも癪だしなんとなく負けた気がする。
テンションは下がったもののそのまま歩き続けると声の元に近づいているらしく段々と会話がはっきり聞こえてきた。

「俺らの上司もさぁ、いい加減頭来ちゃってるみたいで?」
「勝手がわかんない子供には指導が必要だよねぇ」
「確かーあ、あったあった、このナイフが武器なんでしょ?最近のこーこーせーって怖っ」
「ちょっと、いい加減にやめっ…」

平穏な夜に似つかわしくない会話をする無粋なヤツらだ。
適当に余所でやれと追い払う為に近づく。
この時の俺は平常心だった。いたって平常心。
公園の隅のトイレの裏をのぞき込もうとした瞬間に被害者の声が聞こえるまでは。
なんとも言えない透き通った青空のような声。
アイツ、だ。
途端に横でガンッだかバンッだかとにかく何かが崩れたような音がした。
そっちを見るとトイレのコンクリの壁にいつの間にか穴が開いている。
あーあ、どうやらまたやっちまったらしい。
騒ぎになってなんか言われる前にさっさとコイツら殺してバックレよう、うん。
いやそもそもコイツらが俺のことキレさせたせいで開いたんだから俺じゃなくてコイツらの責任だろ。
人間振り切れるところまで振り切れると逆に冷静になるらしい。
妙に冷めた頭でつらつら考え事をしているうちに相手は全員倒れていて、周りは半壊状態だった。

「じゃあ行くか…と、立てるか?」
「あ、いや、ちょっと、無理…かも」
「そうか。よっ、と」

腰が抜けてへたり込んでいる男の体を抱え上げて肩に担ぐ。
男は慌てたような声を出していたが少しすると大人しくされるがままになっていた。
どこか落ち着けるとこ行かねえと。
とりあえず近場に空き地があったはずだからそこにでも、

「あの、シズちゃん?」
「おう……あ?てめえ、今、」
「やっぱりわかってなかったんだ。もう大丈夫だから、降りるね」

放心してる俺をよそに軽々と男は俺の肩から降りた。
多少申し訳なさそうだった気もするがそんなことパンクしそうな俺の頭にはどうでもいいことだ。
肩に抱えていたのは俺が助けた男で、その男はラジオのあの声で、あの声と似た声色が俺の忌々しい呼び名を呼んで、あの忌々しい呼び方をするのはアイツだけ、で。

「い、ざや…?」「そうだよ、シズちゃんにとっては残念なことに。わからなかった?まあわかってたら助けてくんないよね」
「声が違った気がしたんだよ」
「あー、奈倉の時はちょっとよそ行きの声だから。そんなに変わんないと思うけど」
「そうか」

冷静に聞いて見れば確かにそこまで違わない。
気付かなかったのはいつもあの声を聞くのはラジオ越しだったことと、臨也の声を聞くときにいつもキレていたせいだろう。
それにしてもこの状況、どうするべきか。
曲がりなりにもコイツを助けたのは俺でここまで連れてきたのも俺だ。
でも俺は臨也を嫌い、大嫌いなはず、だったのに。
今はそんなに嫌悪感がない、どころか守ってやりたいような気にさえなってるってどういうことだ、これ。

「シズちゃん」
「なんだ?」
「迷惑かけてごめん、俺もう帰るね」

その言葉にはっとして腕を伸ばしたが臨也はもう駆け出していた。
毒づいて、何度もリフレインしてくる一番最後の臨也の顔をかき消そうとするがうまくいかない。
どうやら俺はあの声だけじゃなくて、折原臨也の、

泣きそうな笑顔に、恋をした。






やっと両片思いぽくなった…。
シズちゃん目線だとどうも長くなるらしい。

次でくっつきます!
コンセプトが実恋なんだからくっつかなきゃどうしようもないですものね。

2011.01.04



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -