「新開くん好きです、付き合って下さい!」
「ありがとう佐久間さん、
 でもオレ今誰とも付き合う気ないんだ」

フランケンシュタインに仮装し、たこ焼きを頬張る新開隼人を捕まえて、学園祭で賑わう人々の目も憚らず佐久間凛は言い放った。
聞き慣れた台詞に、聞き慣れた台詞を返す。
一連の流れを繰り返すのは、これでもう6度目だ。

「んん、ブレないなぁ新開くん」
「いやぁ、申し訳ないね」
「ミスター箱学になられる前に言っとかなきゃって
 思ったんだけど、落ち込むなぁ」

彼女がこれから行われるハコフェスの目玉イベント『ミス箱学ミスター箱学コンテスト』を前に6度目の告白を決行したのは、ただでさえファンクラブがある新開がミスター箱学になり更に人気が出てしまうのが怖かったからで。
しかし結果はいつもの通り。
彼女の心配は杞憂に終わり、一世一代の告白を断られるのも悲しいかな慣れたもので、彼女は苦いながらも微笑んでみせた。

「ミスターは尽八が獲るさ、オレじゃない」
「そうかな、謙虚だね新開くん」
「佐久間さんこそ、ミス箱学最終選考残ってたろ?」
「みたいだね、それこそたまたまだよ」
「去年のミス箱学がなに言ってるんだか」
「別にミスに興味はないよ、
 投票されるから出てるだけ。新開くんと一緒だね」
「ははっ、そうだな」

告白後とは思えない和やかムードで会話は進行していく。それは彼の人格の良さが為す技で、それは良いことなのだか悪いことなのだか、これだから何度振られても諦められないのだと彼女は思う。

「今回もとりあえず引くけど、諦めてはないから!
 じゃ、またコンテストで!」



ハコフェス!
Before HakoCon side.新開 [前編] / 2017.05.11

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