ここは箱根学園自転車競技部、ロッカールーム。
箱根学園学園祭ハコフェスの開催を目前にして、自転車競技部レギュラーメンバー陣が各自準備を行っていた。

「ヴァンパイアか...
 スリーピング・ビューティーたるオレに
 うってつけの衣装だな!」
「おっ、似合ってるぜ尽八」
「む、新開はフランケンシュタインか、
 悪いな一番格好良い衣装はこのオレが頂いたぞ!」
「気にすんな、オレはこれ結構気に入ってるよ」

黒スーツに裏地の赤い黒マント、珍しく前髪を下ろした東堂は鏡の前でくるりと一回転してみせた。口内に装着した牙を光らせ、満足そうに笑みを浮かべている。
更衣室の長椅子に腰掛け、にこやかにその姿を見ていた新開は、髪の毛と同じ赤茶色した大きめジャケットと黒のスキニーパンツを着用し、額から頬へ斜めに大きく描いた傷跡、頭に刺さったボルトが目立つ。

「それにしても今年のハコフェスは
 力が入っているな!」
「今年最後だからそう思うだけで、
 毎年結構盛大だぜ?」
「そうだったか?
 まぁいい、今年もミスター箱学の座は
 オレのものだ!負けんぞ隼人!」
「おー頑張れ尽八」

新開を指差し高らかに宣言した東堂だったが、当の新開はやる気なく返事をするといつものようにパワーバーを取り出し、それを齧った。

「なんなのだそのヤル気のなさは!
 箱学女子人気No.1が決まるビッグイベントだぞ!」
「オレは女子人気とか興味ないからな」
「こんな男が昨年の2位とは信じられん...」

普段から女子人気にかける東堂は、新開の態度に怒ったり落ち込んだりと忙しい。
しょんぼりと肩を落とし隣に座った彼を慰めるように新開は齧ったパワーバーを差し出したが、それは結局新開の腹の中に収まることになる。

「そう言えば寿一と泉田は?」
「あぁそうだったな
 おーい福!泉田!準備はまだか?」
「あぁ今行く」
「福富さん待って下さい、まだ包帯がっ」

東堂がそう呼ぶと目隠しのパーテーションを開いて現れたのは自転車競技部主将福富で、彼は身体中に包帯を巻き、そしてその包帯が解けかけているのを一生懸命直そうとしている泉田は上下白黒のボーダー服を着用している。足首に繋がれた鎖の先のハンドボール大の鉄球が重そうだ。

「お、包帯男か、雰囲気あるぞ福!」
「泉田は囚人なのか
 おめさん意外とボーダー似合うなぁ」
「アブッ!ありがとうございます新開さん!
 あれ、荒北さんと真波はいないんですか?」
「靖友はジャンケンに負けて自転車部の宣伝係、
 今頃陽毬ちゃんと一緒じゃないか?
 ちなみに靖友は狼男だぜ」
「真波はさっさと悪魔の衣装に着替えてもう行ったよ
 まったく自由なやつだあいつは...まさか真波も
 ミスターの座を狙っているのではなかろうな!?」
「そんなもの狙っているのは東堂くらいじゃないのか」
「福までそんなことを言うのか、女子人気No.1だぞ
 狙わないほうがおかしいだろう!」
「価値観は人それぞれだと思います、東堂さん」
「ヒュゥッ!泉田いい事言うなぁ」
「準備が出来たな、さあ行くぞ!」

それぞれの思惑を胸に扉は開かれた。
自転車競技部のハコフェスが今、始まる。



ハコフェス!
Before HakoFes side.東堂&新開 / 2017.05.10

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