「チッ、くだらねぇ...
 っでオレがンなことしなきゃなンねンだよクソッ」

10月某日、箱根学園にて。
今日は年に一度の箱根学園学園祭ハコフェスの開催日で、校内はざわざわと落ち着きなく浮き足立っていた。

「文句言わない、
 ジャンケンで負けたのが悪いんでしょ」

長かった夏も終わり、3年生は皆クラブ活動を引退して残り短い学園生活を謳歌していた。毎年この時期になると学園生活最後の学園祭ということもあり、やたら気合いの入った3年生が多く見られる傾向にある。
それは名門箱根学園自転車競技部も例外でなく、部の出し物として仮装することになったわけだがーー

「ケッ!しかも仮装だァ?くっだらねー!あっちーし」

一部それを理解できない人間もいるわけで。

「ちょうどハロウィンの季節だから
 乗っかったんだろうね。靖友は狼男だから
 他の人より熱いのかも、でも似合ってるよ?
 野獣荒北」
「ッセ、てめェはなんだよその格好」
「ん?赤ずきんちゃん
 東堂くんが『荒北が狼男ならこれしかないだろう!』
 って言うから」
「アイツほんとろくな事言わねェな...
 スカート短すぎんだろソレ、
 赤頭巾ってンなんだったかよ」
「さぁどうだったかなぁ?大丈夫、中履いてるから」
「捲ってみせんなバァカ!慎め!」

眉間に深い皺を寄せて、元自転車競技部荒北靖友は同じく元自転車競技部マネージャーで赤頭巾に扮装した一ノ瀬陽毬によって狼男へと変身させられていた。
仕上げに狼を模した被り物を装着し、両頬に描かれた各3本のヒゲはどちらかというと猫のようである。

「よっし、これで完成!あは、狼耳可愛い」
「っせ!陽毬のが可愛...」
「ん?なんか言った?」
「言ってねーヨ!クソ、これ持ってりゃいいンだろっ」

横に置いてあった細長い角材を持ち上げると、その先に付いた「来たれ!インハイ常連!名門・箱根学園自転車競技部!」と書かれたベニヤ板が頭をもたげる。
学園祭を見に来るであろう来年の入学希望者を勧誘するのが目当てのそれは、見た目よりずっしり重い。
これを持って歩く権利を賭けて行ったジャンケンに負けたことが今、彼を不機嫌にさせているのだった。

「そそ、よーし靖友!
 いざ行かん、箱学チャリ部宣伝の旅!イエー」
「ハッ!ンだそのノリ、バカくせっ」
「最後の箱学学園祭、楽しんだもの勝ちだよ!」

勢いよく扉を開けると、校舎はいつもとは違う雰囲気に包まれていた。

今、ハコフェスの幕が上がる。



ハコフェス!
Before HakoFes side.荒北 / 2017.05.09

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