「んだよアイツ毎日毎日!」

バンッ!と大きく音を立ててロッカーの扉は閉まった。
オレがこうしてイライラしてんのは例の隣の席の女のせいだ。オレが何したっていうんだ毎度ツンケンしやがって、意味わかんねぇ。
今日だって当てられて読んだ英文の発音がちょっと違ったくらいで爆笑しやがるし、さっきだってギアチェンジをちょっとミスっただけなのにチクチクそれ責めてきやがるし。
1年のときから当たりが強いなとは思ってたが、最近それが更に顕著だ。

「仲良いよね、雪成ユキと白崎さん」
「仲良くねーよどこみてんだ塔一郎、
 目ぇ悪いのか!メガネ取った勉三さんか!」

隣で新しいサイジャに着替えている塔一郎が笑いながらそう言った。ほら、アンディとフランクもそう思うって、とかお前何言っちゃってんだ、そりゃただの大胸筋だろってツッコミはもう今更だからしねーけど。

「千歳ちゃんと仲良しなユキちゃん羨ましがってる人
 結構いるよねぇ」
「...ボク白崎さんと雪成ユキ、付き合ってるのかって
 聞かれたこと何回かあるんだ、実は」
「あ、それオレも」
「はぁ?冗談だろ」

ちゃっかり塔一郎の話を聞いてた反対隣の葦木場まで絡んできて、オレを挟んだ両サイドが白崎の話で盛り上がる。
付き合ってるだぁ?ないない、絶対あり得ない。
目が腐ってんのは塔一郎だけじゃなかったのか、アイツのあの態度見てどうしてそう思えるのか理解に苦しむ。
ニヤニヤしながら見下ろしてくる葦木場になんか無性に腹が立って、尻のあたりに蹴りをお見舞いしてやった。

「痛いよユキちゃん!
 知らないの?千歳ちゃん結構モテるんだよ?」
「はぁぁ?アレがぁ?」
「塩対応なのはユキちゃんにだけだし、
 いつもニコニコしてて可愛いよねぇ千歳ちゃん」
「気が利くし優しい女性だよ白崎さんは」
「...お前らマジで言ってんの?」

信じられない、白崎がモテる?
気が利く?優しい?んなの嘘だろ。
首にかけたタオルでまだ引かない汗を拭きながら眉を顰めて二人を見るが、多数決では分が悪い。
どうしてユキちゃんにだけ塩対応なんだろうね?とにこやかに言う葦木場。それはオレが聞きてぇよ。
そんな話をしていると噂をすれば影ってやつで、部室の扉がガラリと開くと話題の女が洗濯籠を引っさげて現れた。

「はーい、みんなお疲れ様です!タオル回収しまーす!
 他に何か洗い物あったら一緒に出して下さいねー」
「あ、千歳ちゃんオレも洗濯手伝うよ」

自称洗濯係の葦木場がそれに吸い寄せられるよう駆け寄って、葦木場と並べば流石にアイツも多少女みたいに見えるけど、オレにはアレの何がいいのかさっぱり分からない。別に分かろうとも思わないが。

「ありがと、でも今日は余裕あるし大丈夫!
 葦木場くんは練習頑張って!
 ちょっとそこの白髪の人、早く洗濯物出しなさいよ」
「見りゃわかんだろ、まだ使ってんだよ」
「じゃあそれは自分で洗ってねー」
「げっ、ちょっ、待て、すぐ出す!出すから!」
「時間切れでーす」

オレをチラリと見ることもせず白崎は回収したタオルを洗濯籠に放り込みながら言い放つ。これだよこの差、葦木場には優しいくせにどうなってんだ。

「ちょっとくらい待てよ!
 他にも出してねーヤツいんだろが!」
「あ、タオルもらいまーす」
「おまっ、オレのタオルも!無視すんな!」

結局どうにかタオルは籠に入れられて、自分で洗うなんてことにはならずに済んだが、白崎って本当ムカつくヤツだとオレは思うのだ。



モノクロ*ノーツ 03
オレ限定の塩対応 / 2017.07.08

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