「おめさん千歳ちゃんに冷た過ぎるんじゃないか?」

ガーガー煩いローラー音に紛れて声がした。
ンだよ藪から棒に、ポタポタと汗垂らしながら下向いてた頭上げて左を見ると、声の主がオレを見ていた。

「ア?別に普通だろ」
「彼女には優しくしてやれよ、靖友」
「っせーな、余計なお世話ァ!」

先にローラー始めてた新開が心配げに言ってくる。
何、さっきの見てたワケェ?悪趣味だなオイ。
別に冷たくなんかしてねーだろ、たまたまタイミングが悪かっただけ、つーかあんなの通常運転と変わんねェし。
そもそもアイツはそんなヤワじゃねェ。こんなオレにガンつけられて、目も逸らさずに言い返してくるようなヤツだぜ?こんくらいでヘバッてたらオレと付き合うとか無理だっつーの。
まぁ確かに最近練習ばっかで構ってやれてねぇってのは認める。しょーがなくねェ?インハイまであと二ヶ月しかねェっつーのに女にうつつ抜かしてるヒマなんかあるわけねぇし、そんなのアイツだってわかってんだろ、マネジなんだしよ。

「はい泉田くん、ドリンクです」
「すみません白崎先輩、ありがとうございます!」
「新開くんと、福富くんも」
「サンキュー千歳ちゃん」
「あぁ、助かる」
「東堂くんはもうちょっと後のほうがいいかな?」
「いや今貰おう、悪いな白崎、恩にきる」
「荒北くんはドリンクどうする?」
「飲むに決まってんだろ、さっさと寄越せヨ」

なんて頭ン中で思ってると、ジャージに着替えた千歳が人数分のボトル抱えて部室に戻ってきた。千歳はローラーに乗ったまんまのオレらの周りを
移動しながら、ボトルを一つ一つ手渡していく。
最後のボトルをオレに差し出す千歳、新開が変なコト言いやがるから変に意識しちまうじゃねーか。
だーもークソッ、優しくって何だよアリガトネとか
言えばいいワケ?無理だろ今更ンなの気色ワリィ。
つーかヤベェ、ジャージに着替えてスカートじゃ
なくなったから余裕と思ってたっつーのに何だコレ、マジでどうした今日のオレぇ...
ちょっと千歳のニオイがしたからって反応すんじゃねェよ、このバァカ息子がァ!
匂いに敏感なこの嗅覚を、こんなにも恨めしく思ったことはない。
クソッ、雑念なんか吹っ飛ばしてやンよ!全力ケイデンス、ぶっちぎれるまで回せオラァァァアア!!

「急になんなのだ?!」
「張り切ってるな靖友!」
「まだ開始30分だぞ、程々にしとけ荒北」
「ッセ、回したい気分なんだよ!ッラァァァアア!」
「...アブアブアブアブアブアブゥゥゥ!!」
「っるせー泉田ァ!同調すんなァ!」



荒北靖友の劣情 3
roller / 2017.05.01 / 11.12加筆修正

←2 backnext 4→
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -