これはシーツだろうか。
そう思うくらいに持ち上げた白い布は大きくて、ふんわりと拓斗の匂いを残していた。

「こんなところに脱ぎ捨てて...
 ちゃんと洗濯しなきゃ駄目じゃない」

ハァ、と軽い溜息と共に小言が漏れる。これじゃ彼女というより母親みたいだ。
手にした布を軽く畳んで汚れ物放置犯を見上げてみると、彼はどうも落ち着かない様子で視線を泳がせながら私を見ている。何だろう、シャツにキスマークでもついてるの?再びシャツを開いて空気の中を泳がせてみるけど、どこを見たって白しかない。

「あのね、その...オレ、毎日千歳ちゃんに
 ワイシャツ洗って欲しいんだ。
 あと出来たらアイロンもかけて欲しい」

声色はデクレッシェンド、それに反比例する彼の頬の赤みはクレッシェンド。
その様子から察するに、単なる家政婦宣言ではない何か別の意図があるんだろう。彼が言いたかったことは想像に難くないけど、容易に認めたくはない。
もしも私が思うそれであるのなら、

「それじゃ分からないよ拓斗、
 ちゃんと私の目を見て言って」

彼の大きな手に指を絡めて首が痛むくらいの頭上を見上げる。いつもより下がった眉に、長い睫毛に装飾された彼の瞳に映るのは私だけ。

目を逸らさないで私だけを見て拓斗、
そうしてくれたら私の答えは勿論───

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