「バカ!嫌い!しんじゃえ!」

我ながら語彙力の乏しい暴言だと思う。
それと共に投げつけた手元のクッションは、雪成の顔面に直撃すると彼の身体を伝って床に落ちた。

「浮気とかサイテー!バカ!クズ!ヤリチン!
 腐ってもげろ!」

私というものがありながら、彼は平気でその身に紅の痕を残す。もう幾度繰り返されたか分からないのに、何度だって私の憤りは限界頂点を超える。狂ったように叫んで辺りのもの全部投げ付けて、今度こそ別れてやるといつも思うのに、飛来物を避けながら近付いてくる雪成の手が私の肌に触れれば最後、私の中の鬼は眼前の銀色に魅せられて、只の人に戻るのだ。

「とか言って、お前どうせオレのこと好きなんだろ?
 逃がさねぇよ」

───なんて憎く愛しい男。
降ってくる甘美ならキスから逃げられる道理など、私には無かった。

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