「あ?」

くんっと背中を引かれる感覚に後ろを振り返ると、そこには半袖の白セーラー服を着た女が居た。
到着した電車に乗ろうと思ってた矢先のことで、なんだコイツ、電車に乗り損ねんじゃねーか。
周りのヤツらはどんどんそれに乗ってって、オレとそいつだけホームに取り残された状態になる。

「あの、あ、あのときはありがとうございました!」

俯いてたそいつが頭を上げると黒の肩まで伸びた髪がサラッと靡いて、少し赤くなってるその顔に見覚えがある。確かちょっと前に痴漢から助けた女子高生、か?
あんときはそんな余裕もなくじっくり顔を見たわけじゃねぇが、本人が言ってることといい、多分間違ってないだろう。

「っあー!あんときの子ォ?」

改めて見てみればコイツ、睫毛なっげェ、顔ちっさ!
さすがカトリック系女子校富士女学院の生徒ってか、透明感とか清楚感が半端ねェ。
そりゃあのおっさんも手ェ出したくなるよなァ、同じ男として気持ちはわからないでもない。が、そりゃ犯罪だバァカが。

「あ...ごめんなさい、電車...」

そんなやりとりしてる間に、目の前の扉はプシューと音を立てて閉まっていった。掴んでたオレの服を離して、そいつは申し訳なさそうにまた俯く。
ゆっくりと電車は次の駅へと動き出して、それと同時に湿気った空気がホームの中へ流れ込んで来た。

「今日はなんもねェし構わねェよ、オレに何か用ォ?」

まぁ電車一本遅れたとこでなんの問題もねェ。
慰めってわけじゃねぇけど俯くそいつにそう言うと、パァッと表情を一変させて鞄の中をごそごそしだす。
なァんか犬ッコロみたいだな、コイツ。

「お礼をしたいと、ずっと思ってて」
「気にすんなっつったろォ」
「これっ、よかったら」

鞄の中から赤い袋を引っ張り出して、両手で持ったそれをオレのほうに差し出した。
いちご味の飴?んでまたこんなモンを。
まぁくれるっつんなら貰っとくけど。

「ッハ!丸々一袋かヨ!あんがとねェ」

なんとなく袋を裏返して見ると、表からは見えなかった中身が見えた。
あ、この飴玉、あの時のヤツ!同じのわざわざ準備してたのかよ。会えるかもわかんねぇオレの為に?
飴の袋から視線を戻してそいつを見ると、照れくさそうにニコッと笑った。
もしかしてこれ、オレの好物だと思っちゃってるヤツゥ?たまたまポケットん中入ってた貰いモンだっつって、んな顔されたら本当のコトは言えねェわ。

「遅刻とか、しませんでしたか」
「あーウン、余裕あったから大丈夫ゥ
 そっちこそ、えーとォ?」
「白崎です、白崎千歳」
「白崎チャンこそ遅刻したんじゃねェの、あのあと」
「あのあとは...
 警察行ったり色々で...結局休んじゃいました」
「そりゃ大変だったねェ」

白崎千歳って名乗ったそいつとホームに並んで、自然とこの前の話になる。んなこと聞いたら思い出させてワリィかとも思ったが、案外平気そうな顔してて安心した。
次の電車を待つ間このまま喋ってんのもいいが、ホームに上がってくるヤツらの数がじわじわと増えてくる。女のコ立たせっぱなしも、アレだしな。

「白崎チャン、
 次の電車来るまでちょっとそこ座らねェ?」



AとJK 2-4
あのときの / 2017.06.25

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