/* 第5章では友人のちーちゃんが出張ってきます */
/* オリジナルキャラ登場にご注意下さい */



「佐々木さん」

テストの返却にこんなにも緊張したことってあったっけ。

「長良さん」

テスト初日の一限目だった数学の、私の中で一番不出来だったと思われる数学の、テストの返却がまさか大トリになってしまうなんて思いもしなかった。
その他の科目の結果は概ね良好。前回よりは得点を伸ばしたし、これならきっとスマホへの機種変更も許されるはずなんだけど、問題は今現在進行形で返却されているそれである。
ーーーどうしよう、数学が出来てなかったら。

「千種さん」

今回のテストの平均点を爆下げする結果になってたらと思うと気が気でなくて机の上で頭を抱える。荒北さんが書いてくれたノートに見惚れて思いの外勉強が捗らなかった、なんて当然言えない。とはいえ一応やれることはやったつもりだ、荒北さんが教えてくれたところだけは完璧に出来た自信があるし!

「白崎さん」

...うそ、答えがなんか変な分数になってしまった、どこかで計算間違いしたのかも。答えが整数とは限らないのは分かってるけど、やたら大きい分母に通分できない分子が乗っかると不安しか残らない。
荒北さんに数式省略せずにちゃんと書けって言われたのに最後の問題は時間が無くて略式書いちゃったし、見直しも出来なかったし、あぁもう何で私はこんなにポンコツなんだろう。

「白崎さんー?」
「っあ、はい!」

不思議そうな顔する先生の元に慌てて駆けつけると、テストを受け取ったちーちゃんとすれ違った。何やってんの千歳、って彼女は笑う。いいよねちーちゃんは数学得意だもん、今回もきっといい点なんでしょう?その解答用紙と私の解答用紙交換してくれないかな、なんて実現したとして無意味な行為に淡い思いを馳せながら差し出されたテスト用紙を受け取る。
あーっ、今赤いバツ印が見えた気がする。やだやだやだ!もうやだ、時よテスト前に巻き戻りたまえ...!

「今回頑張ったね白崎さん」
「...へ」

紙面から逸らした視線を恐る恐る戻してみると、右上の角にあったのはこれまで見たこともない点数だった。今回のテストの平均点を少し超えたそれが急にキラキラ輝いて見える、これは永久保存決定かもしれない。件の変な分数は正解だったし、最後の問題はマルではないけどおしかったねのサンカク、数学の神は私を見捨てていなかった。
やりました荒北さん、私やりましたよ...!
すぐお母さんに連絡して機種変更の件を確約しなくちゃ、席に戻る足取りが軽いスキップにだってなっちゃうよ。

「千歳どうだった?」
「ハレルヤ...!」
「え、何その反応どうしたの...?」
「ちーちゃん、私これで遂にスマホ解禁だよ...!」
「へぇ、何か様子がおかしいと思ったらそういうこと
 だったんだ。無いなら無いでしょうがないみたいな
 態度だった千歳が急にスマホだなんて怪しい...
 どうしてそういう経緯になったのか聞きたいな?」
「えっ、」

し、しまったー...
苦手な数学でいい点取れて浮かれ過ぎて口が滑った。いや口は滑ってない、滑ってないのにバレた、何で?って態度でバレたに決まってる。それくらい私は今浮き足立っているのだから。

「もしかして...オトコ?」
「えっ!?」
「やっぱり!ちょっと前から思ってたんだよね、
 千歳やたら携帯気にし出すし、
 雨降らないかなぁとか謎の呟きするし」

口元は笑ってるのに目が笑ってない!ちーちゃんはじっとりとした目線を私に向けている。ちーちゃんは私のことになると実の親より過保護、いわゆるモンスターペアレンツ、いやモンスターフレンズか。だからあえて言わないでおいたのに遂に勘付かれてしまった、どうしよう...
痴漢に遭ったところを大学生のお兄さんに助けてもらいました。そして彼に恋してしまいました。なんて言ったらそんなの吊り橋効果!騙されちゃダメ!って言われるに決まってる。
二人で会う?ダメ!絶っっ対ダメ!危ないから私も行く!ってなるのを避けるべく荒北さんと一緒に帰った話も勉強教えて貰った話もしなかったのに、本当はすごくしたかったけど、荒北さんに会いたかったから我慢してたのに...!

「そ、そんなこと言ったかな...」
「言ってたよ!
 あとでじっくり聞かせてもらいますからね」
「あっ...あぁぁぁ...」

う、うわぁ、怒ってる...どうしよう、怒られる...
目を泳がせて誤魔化してみてもこの授業が終わればお昼休み、私に逃げ場なんてない。こうなったら全力で荒北さんの人となりについて語るしかない、その辺の男の人とは違うんだって、荒北さんは優しくて格好良い私の王子様なんだって、熱弁をふるってご理解頂くしかない!
先生が唱える数式の魔法は右耳から入って左耳から抜けていく。授業なんてそっちのけになっている私の頭の中は、これまでになく荒北さんのことでいっぱいになっていた。



AとJK 5-1
モンスターフレンズ / 2018.02.18

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