オレの朝は、そこそこ早い。
携帯のアラームで目が覚めて、欠伸をしながらベッドを出た。のろのろ着替えて階段下りて、洗面所の鏡の前に立てば相変わらずオレの髪はわさわさと波打っている。想像に難くないって?ほんとそれな。毎朝髪の毛セットすんのに時間かかってんだぜ、これでも。手ぐしなんかじゃ直んないクセをドライヤーの熱の力でどうにかしてから、やっとオレは朝メシにありつけるんだ。

ぼんやりTVを見ながら朝メシ食ってたら、うっかり行かなきゃなんない時間を過ぎていた。どわっちょ、やっべ、朝練遅刻しちまう!リュックん中に弁当押し込めてメットを片手に玄関の扉を開ける。土間の端に置いてたキャノデと一緒に外に出ると、眩しい朝日がオレを照らした。いい天気だ、今日は自転車日和だな、なんつって。カラカラとラチェット音を静かな住宅街に響かせながら、フェンスの外に出て家の前の道路でメットを被る。バックルをカチリと留めて、早く行かなきゃ遅刻だっつーのにオレはまだ自転車に跨がらない。今日はもう新聞回収しちまったのかな、それとも千歳はまだ寝てんのかな。ちらりと振り返って隣の家の様子を伺ってると玄関が開く音がして誰かがこちらへ近付いてきた。

「あ、おはよ純太くん」
「はよ、千歳」

隣の家に住む幼馴染の千歳はいつもオレが朝練に行く頃に新聞を取りに出てくるんだ。どうせ学校一緒なんだし別に今挨拶しなきゃダメってワケじゃないのに、つい千歳出てこねーかなって待っちまう。朝練頑張ってねって微笑む千歳に手ぇ振ってペダルを漕ぎ出せば、何か今日も頑張れる気がするし、いいことがあるような気もする。朝一番千歳に会えただけでアガるって、オレって結構現金な男だよなぁ、全く。
風を切りながら全力ケイデンス、それと同じみたいに千歳にもぶつかっていけりゃいいのにオレ達の関係は今日も変わらない。いつからか芽生えてたこの特別な感情を伝えられないまま、時だけが過ぎて行く。今の関係を壊すのが怖い、とか言ってる間に気付けば高3だって、そんなの笑えねーよ。

───何かきっかけさえあれば
なんて願っちまうオレは存外馬鹿なのかもしんねーな。



きみのとなり 2 / 2018.01.13

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