「見たで、あーらーきーたぁー!」

本日の講義終了後、部室の扉を開いて挨拶も程々に目当ての男に向かってずんずん進む。何だ何だと騒めく部室内で荒北は着替えよった手ぇ止めて怪訝そうに顔を顰めた。中々タイミングに恵まれんで聞けんかったんじゃ、やっとチャンスが巡ってきた言うのに人目なんぞ気にしちゃおれんけぇ!昨日の事ォ、徹底的に吐かせちゃる!

「ンだよ開口一番...」
「昨日駅で女子高生と話しよったのぉ、お?
 何じゃアレ、どういうことじゃあ!?」

詰め寄るように荒北に接近すると、荒北はハトが豆鉄砲くらったような表情しよる。と思や瞬間カッと顔を赤くしよった。ェエエエ、なんじゃその反応ぉ!?怪しいにも程があろうがぁ!

「ハ、てめ待宮、昨日金城と自主練してたんじゃ
 なかったのかヨ!」
「んなもんナシじゃボケェ!
 何か怪しい思ぉて後つけてみりゃあ...」
「金城ォ!?」
「待宮も用を思い出したと言って先に帰ったんだ
 俺は関係ないぞ荒北」
「...ッチ!」

荒北が勢いよく振り返りゃ、隣で同じく着替えをしよった金城がしれっと表情も崩さず言い放つ。ワシにはそう見えただけで、アイウェアん中の目がどうなっとったかは知らんが。
分かっとって止めんかったくせに何ちゅう奴じゃ金城...全部ワシの所為にする言うんか、エェ!?
まぁええけどの、それより何より今は荒北締め上げるんが最優先じゃ!

「誰じゃあの女子高生?富士女の子じゃったの
 彼女か、彼女なんか荒北ぁ!エェ!?」
「っげーよ!こないだのォ!」
「こないだのぉ?」
「痴漢されてた子ォ!」

"彼女"の単語に一瞬周りがザワついたが、荒北の全力否定の叫びで払拭される。だよなー、荒北に彼女なんか、って聞こえたで今ぁ。そがに思うんはワシだけじゃないんじゃのぉ、部の総意じゃ、エッエッエッ!そうじゃけど、いや、そうじゃから余計何で女子高生と会っとったんかが気になってしょうがない。痴漢の子ゆーたら確か前、雨の日に電車で助けた言うアレか?そいやぁそがな話聞いたっけかの。柄じゃないのぉゆーて笑ったような、うろ覚えじゃが荒北が言うとることはあながち嘘でもなさそうじゃ。
あぁ、ほうか、じゃけぇあの子荒北に惚れたんじゃな?痴漢から助けてくれた、みたいな付加価値でもないと荒北なんぞ好きになるワケないもんのぉ?納得いったわい。なら次じゃ!

「ほぉーなるほどのぉ...
 で?何でその子と待ち合わせしとったんじゃ?
 楽しそうじゃったのぉティータイム、エェ?
 まさかたぁ思うが、その女子高生と連絡先交換とか
 しとるんじゃなかろぉの?お?」

にじり寄って疑問をいくらか投げ付けちゃれば、怯んだ荒北はワシから視線を逸らす。
お、待ち合わせについては否定せんのんか荒北ァ、じゃあどうやって待ち合わせしたんかのぉ?偶然出会ったにしちゃ出来過ぎとるもんのぉ?連絡先交換なんぞ普通せんのんじゃったよのぉ?それだけはワシ鮮明に覚えとるけぇ!

「ッセ、てめーに関係、」
「その顔ぉー!しとるんか荒北ァー!?
 何でワシにも教えてくれんかったんじゃあ!?」
「ハァァ?んでテメェに教えなきゃなんねンだよ!」
「せこい、せこいんじゃ荒北ァ!
 自分だけ女子高生と繋がりよってからに!
 どしてそがなことになっとんじゃ詳しく話せぇ!」
「...っ何もねーよ!」
「絶対ウソじゃろぉが、吐け荒北ー!」
「るっせー黙れ!
 ンな暇あんならペダル回せボケナス!」

ワシに視線戻した荒北は歯茎剥き出して大口開けて、いつも通りの野獣顔を作っとるクセに頬がピンクに染まっとる。そがな顔して何もないワケないじゃろが!それで隠せとるつもりなんか、エェ!?
全開じゃったサイジャのジッパー上げて、荒北は勢いよくロッカーの扉を閉めると大きく肩を揺らしながら大股ガニ股で部室を出て行く。
なっ、アイツ逃げよった!逃げよったで!?こりゃいけん、ワシも後を追わにゃ、まだ話は終わっとらんけぇ!
急いでサイジャに着替えるワシの横で、金城は不敵な笑みを口元に浮かべとった。傍観者のフリして一番楽しんどるのは、もしかするとこの坊主なんかもしれん。



AとJK 3.5-4
待宮栄吉は見た 4 / 2018.01.12

←3.5-34-1→
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -