校門を出て下り坂を急いどったら、大分前方に探しとった姿があった。あのこまい黒頭は間違いなく荒北じゃ。あんまり距離を詰め過ぎてもいけんけぇ、ぎり見えるくらいの距離を維持する。やっぱり駅に向かっとる、駅に何があるんかのぉ?ぶち心踊るわ。
荒北のあのいちごキャンディ見つかった時の反応と、あのやわい顔がイコールじゃったとしたら、ワシ的予想ではあのキャンディくれた女子とこれから会うってとこじゃろう。...まぁ女子とは限らんが。女じゃのうて男じゃったほうがワシの精神衛生は守られる。いやしかし相手が男じゃったとしたらあの顔はヤバイじゃろ!エッエッ!...あ、福チャァンにはあの顔してたんか、もう既にヤバイんじゃったわい...
ンン?てことは福チャンが駅で待っとるんか?もしかしてこっちに遊びに...エェ?このド平日に?まさかのぉ...
ますます深まる謎に頭を悩ませつつ、気持ち物陰に身を隠しながらワシは荒北の後を追った。坂下りきって突き当たりを曲がり、荒北が駅の構内に入ってくのを確認してからダッシュで横断歩道を渡る。何の曲か知らんが、青信号を知らせる曲がちぃと間抜けじゃのぉ。鳥の声じゃいけんかったんじゃろうか。なんてことは今どうでもええの、とにかく駅に入った荒北をはよ見つけにゃあ!
駅に入って荒北に見つからんようにコソコソと券売機前まで移動して、入場券...いや、ついでじゃしワシも今日は電車で帰るかのぉ。最寄り駅のボタンを押して、出てきた券と釣りを掴んできょろきょろ辺りを見回すと、ホームへの階段を登っとる荒北を見つけた。腕にぶら下げられたビニ傘が階段にぶつかりよる。もうちぃと気にしちゃれぇや、いくらビニ傘じゃ言うても。あっ、ワシャ傘どしたぁ?大学に忘れてきてしもうたかの、まぁええか。
荒北が階段登り切ってから後を追わにゃ。そがぁなこと思いながら影から見とると、階段を登り切った荒北はその場で立ち止まって何かを探すそぶりを見せた。ェエ?こりゃ待ち合わせ確定じゃのぉ!誰が待っとるんかのぉ、福チャンか?それとも女子じゃろか?ホームに消えた荒北を追って階段を一段飛ばしで駆け上がる。呉の闘犬の血が騒ぐけぇ、はよう獲物を見つけぇと内なるワシが叫ぶけぇ!
じゃがいけん、ちぃと落ち着かにゃ荒北に見つかってしもうたら本末転倒じゃ。こういうときこそ心穏やかに、そっとホームのコンクリ踏みしめてワシはコソコソしつつ荒北を探しとった。そしたらどうじゃ、ひゃっ!とかいう奇声がどっかから聞こえてなんかと思って見てみれば、向こうの自販機に荒北のリュックの端がある。

きたぁぁぁ!こりゃきたでぇぇ!!

女子説の勝利じゃ、not福富じゃあ!
すすっと自販機の裏に近寄って耳を澄ませば、

「電車来るまで時間あるし、
 茶ァ付き合ってよ白崎チャン?」

ゴトンと茶が降ってくる音がした後、荒北の声がそう言った。なんじゃその言い方ぁ、こそばいぃわい!ほんまに荒北か?まさか荒北じゃない何者かじゃったりせんかのぉ...?
離れてく足音、どっかベンチでも座るんか?自販機の影から顔半分だけ覗かせて荒北と待ち合わせしとったんじゃろう相手を確認しっ...

ッエェェェェ!?
女子高生、しかもあの白い制服、富士女のぉぉ!?
どういうことじゃ荒北ァァ!!


[ 広島弁翻訳補足 ]
*こまい→小さい
*いけん→いけない、ダメ
*ちぃと→ちょっと
*はよ見つけにゃあ→早く見つけなきゃ
*こそばいい→くすぐったい


AとJK 3.5-2
待宮栄吉は見た 2 / 2018.01.04

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