真剣な顔しながら白崎チャンは、懸命になってノートにペンを走らせている。
かと思えば手を止めて、シャーペンの上先を唇に添え頭に疑問符を浮かべて首を傾げながら考え込んだ。
暫くそのままウンウン唸ってたが、どうにも分からなかったんだろな、極限まで頭捻りましたみてぇな難しそうな表情をした白崎チャンは助けを求めるようにオレを見上げる。そこ躓きやすいトコだよねェ、オレも苦労した覚えがあるヨ。
ノートの端にヒントを書き込んでやると曇ってた表情が一変して華やいで、またカリカリとペンが鳴る。
白崎チャンの持つシャーペンのノックんとこにぶら下がる横っ飛びポーズのキジ猫のマスコットがゆらゆら揺れて、走ってるみてェに見えんのがまたおもしれェ。
あ、そいやさっき白崎チャンから借りたこれにもよく見りゃ猫がぶら下がってら。こっちは三毛のごめん寝ポーズ、なかなかいいセンスしてんじゃナァイ。
白崎チャン、猫好きなのォ?って必死に問題と格闘してるときに聞くもんじゃねェか。
躍動する猫を眺めてるうちに2問目の問題もすっかり解けて、解にさっとアンダーラインを引いた白崎チャンは渾身のドヤ顔でオレを見る。
その百面相、ホンット見てて飽きねーな。

「出来ました!」
「正解、ンじゃ次の問題、今度は自力で解けんだろ」
「えっ」
「オレァ飲みモン取ってくっけど
 白崎チャン何かいるゥ?」
「大丈夫です
 あ、でもこっちは大丈夫じゃないかも...」
「大体出来てっから大丈夫だヨ
 制限時間10分な、はいスタートォ」
「わっ、あっ、はいっ」

スマホのタイマー起動して10分にセット、カウントダウン開始のボタンをタップすると、慌てた白崎チャンの目線はテキストに戻る。
ッハ、お利口チャンだねェ白崎チャンは。
アキチャンにそうするように、オレは席を立つ勢いでつい白崎チャンの触り心地の良さそうなまん丸の頭に手が伸びた。
無意識ってヤツは恐ろしいモンで、ハッと気付いて手を引っ込めようにも既にオレの指は白崎チャンの髪の毛に触れている。
うっわヤッベ、つい触っちまいましたとかマジでそれ痴漢と同レベルだからァ!いやこの場合は激励的な意味合いのが強いからセーフか?
びっくり顔した白崎チャンのでっかい黒目と目が合って、オレは、あ、これはアウトだわ、って思った。白崎チャンは犬じゃねェ、れっきとしたオンナノコだ。
あーもーわかってんよ、わかってっけど...
けど?けど何だよ、どうしたいんだオレァ。
つーかここまで来りゃ手ェ引っ込めたほうが不自然だ。激励、そうこれは激励のヤツだと自分に言い聞かせて割り切って、わしわしと白崎チャンの顔撫でながら福チャンがよくオレとか新開とかに言ってくれたみてぇに白崎チャンなら出来るヨ、とか言って誤魔化してみたりして、ンだコレ小っ恥ずかしい福チャンよくンなこと言ってたな!
オレの恥ずかしさが伝染しちまったんだろか、白崎チャンの顔もほんのり赤くなっていく。居た堪れねェ空気の中、白崎チャンは子供みてぇな屈託のない無邪気な笑みを浮かべて、またハイッと小気味よく返事した。
ノートに視線が戻ったのを確認してから、その場から逃げるみてぇにオレは白崎チャンに背ェ向けて人の居ねェ客席の合間を早足で突っ切って行く。

「あ、スンマセン、便所はァ」
「あちらの突き当たりにございます」
「っざす、
 あとあの卓に頼んでた食後のデザート頼ンます」
「かしこまりました」

ーーーなァに今の白崎チャン、反則じゃナァイ?
ンな顔されっともっと撫でてやりたくなんだろが。
って相手は未成年、女子高生だっつーのに何考えてんだオレは。犯罪者にゃなりたかねーヨ!
ガシガシ頭掻きながら便所の扉開けたオレは、声になんねー叫びをあげるのだった。



AとJK 4-7
激励的なヤツ / 2017.11.21

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