「お待たせ致しました、ご注文お伺いします」
「から揚げとポテト、食後にあつあつアップルパイ
 あとドリンクバー2つでェ」
「かしこまりました
 ドリンクバーはあちらにございます
 ご自由にお持ち下さいませ」

やって来た店員にさくっと注文してからメニューを畳んで正面を見ると、白崎チャンはそわそわと落ち着かない様子で目を泳がせていた。良かれと思って誘ってみたものの、こりゃ失敗だったかもしんねェな。
そもそも男と二人でファミレスって白崎チャンの学校的にOKなワケ?とか考え出すと不安になってくる。
穢れも知らない真っ白なセーラー服が余計背徳感を煽るっつーかなんつーか、って何考えてんだオレ。

「私飲み物取ってきます、荒北さんは何にしますか?」
「アー、じゃ何か炭酸頼むわ」
「はいっ」

そう言って席を立つと、白崎チャンはさっき店員が指したドリンクサーバーへ向かっていった。
相変わらずそわそわキョロキョロ、初めての場所に来た犬猫みてーな挙動が可愛いじゃナァイ?とか思いながら、ついじっと白崎チャンの動向を見つめちまう。
どれにしようかと泳ぐ指先、顔を見なくても何となくわかる、まァた百面相してんだろ。今度は何だ、何探してんのォ?ストローならあっちだヨ白崎チャン。
両手にグラスを持った白崎チャンがこっちを振り返る直前になってやっとオレはそこから視線を逸らした。
あっぶね、ガン見してんのバレたら流石に気まずい。

「荒北さん、荒北さんっ」
「ン?」
「ベプシありましたよ!ベプシ!」

見てませんでしたァ、みたいなフリしてオレの名前を呼ぶ白崎チャンを見上げると、白崎チャンは目ぇキラキラさせながら気泡湧き立つ黒褐色の液体をオレに差し出してきた。
これお好きでしたよねっ?なんて言いながら、誇らしげに微笑む白崎チャンの姿にどこか見覚えがある。

「ッハ、アキチャンみてぇ」

ボール拾って戻って来たアキチャンが褒めて欲しそうに尻尾振ってる時とおんなじ、別に見た目がアキチャンに似てるワケでもねェのにオレにはそう見えたんだ。
白崎チャンを犬と一緒くたにすんなって話ではある、って何か前も同じようなコト思った気がすんな。
ポロリと出ちまったオレの言葉にさっきの笑顔から一変、微妙な顔しながら白崎チャンはまた席に着いた。
ヤベ、気ぃ悪くさせたかも。

「...あの、あきちゃんってメアドのですよね」
「あー、ウン、そう」
「荒北さんの彼女、ですか...?」
「...ハ?彼女?ちっげーよ、実家で飼ってる犬ゥ!
 彼女なんか生まれてこのかた居たことねーし」

それよく言われんだヨ、紛らわしくてゴメンネェと付け加えてみたものの、彼女居ない歴の件は完っ全に蛇足で墓穴、ンなの自白してどうすんだよ格好悪ィ...
ほらァ、白崎チャン目ェまんまるにしてンじゃん!
バッカじゃねーのオレ。それに犬扱いしてんのに変わりはねーし、何のフォローにもなっちゃいねェ。
白崎チャンが持ってきてくれたグラスを引っ掴んでベプシ一気飲みするか、おかわり取りに逃げる口実の為に。

「そうなんですか、私てっきり彼女だと思ってました
 私も生まれてこのかた彼氏なんて居たことないです
 ふふっ、一緒ですね」

ンなこと考えてグラスに伸ばしかけてた手が止まった。
白崎チャン犬扱いに気付いてねェ、しかも何故か満面の笑みを浮かべてる。
なんかよくわかんねーけど助かった、白崎チャンの機嫌が良くなったんなら何よりだヨ。

「っし、ンじゃサクッと問題やっつけちまうかァ」
「はいっ!」



AとJK 4-5
蛇足と墓穴 / 2017.11.02

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