どうして学校行事ってやつにはこんなにも心が踊るんだろうか。
ひんやりと冷たい初秋の最中、心なしか熱くなっているような錯覚すら感じる色とりどりに装飾された校舎に、いつもは2種類しかないはずの衣服も今日は様々だ。
学園祭という年に一度の大々的な催しに私はやたらテンションが上がっていて、教室内に簡易的に作られた女子用更衣スペースから黒の衣装を見に纏い意気揚々と飛び出した。
体育祭の時もそうだったけど、きっと私は一致団結とか一味同心とか一蓮托生とかそういうのが好きなんだろう。パーテーションの向こう側に集まるクラスメイトが揃いの衣装を着てるというのもまた心が昂ぶる要因の一つ。ただし私の頭の上には他の子たちが付けていないものが乗せられてしまっているのだが、これはいかがしたものか。
クラスの看板娘の証らしいけど、喜ばしいやら物悲しいやら、もう1人の看板男と色違いの猫耳は鏡の中でメイド服に勝るとも劣らない激しい自己主張をしていた。
秋葉原で見るようなスタイルになってしまって隣の男同様どんよりとした気分になったけど、周りから可愛いだとか似合うだとか囃し立てられればまぁ悪い気はしないわけで、ならばいっそ開き直ってこれを楽しんでしまおうと私はすっぱり気分を切り替えた。
不名誉な白黒コンビの称号も今日は快く受け入れよう、相方の黒田は全くもって乗り気じゃないけど。
そういえば自転車のユニフォーム姿でない黒田の近くに立つのは久しぶりな気がして、ちらりと横を見上げると、黒猫姿の黒田はむっつりと口を一文字に結んでいる。さっきは似合わないと笑ってしまったけど、もう少しにこやかにしてれば悪くないんじゃない?

「黒田、にっこりしてー」
「んな姿で笑えっかよ」
「かっこいいよ黒田ー」
「おま、さっき似合わねーって笑っただろが」

見上げる私の視線に気付いた黒田は不機嫌そうに私から顔を背ける。
コンビなんだから連帯責任だし、やるからにはやる、半端な気持ちでいるから恥ずかしいんだよ!
逃げて行こうとする黒田の腕に巻きついて、こちらに照準を合わせている写真部のカメラに笑顔を向けた。身長差を埋めるように黒田の腕をぐいと引いて揃いの猫耳を並べて、もう一度黒田に囁く。

「笑って、黒田」
「〜っっ、わかったよ...」

ざわざわと騒がしい周囲の声でシャッター音がかき消される。なんかこういう、学園祭!って感じのこの雰囲気がたまらなく好きだ。
写真映りを確認すべくステップ軽くカメラマンに駆け寄って一眼レフの内側を覗き込むと、画面に映るは白髪と黒髪、黒猫と白猫、並んだ私たちは笑顔。
白黒コンビらしくて中々いいじゃない?
というか、案外...

「黒田って思ったよりかっこいい...?」
「っは、今更気付いたのかよ千歳
 登れる上にこの美形、格好いい身体、
 天はオレに三物を」
「別に美形ではないし!東堂先輩のパクリだし!
 しかも格好いい身体って何、無理やり過ぎ!
 あはは!」
「るっせ、冗談に決まってんだろ気付けよ!」
「はぁ、おっかし...出来たらもう一回、ポーズ付きで」
「やるかバーカ!」

『 これより箱根学園、学園祭を開催致します
 一般のお客様は... 』

不機嫌面してたくせに思いのほか調子が出てきた黒田とそんなコントをしてクラスみんなで笑ってると、スピーカーから学園祭の始まりの合図が鳴り響いた。
さぁ楽しい時間の幕開けだ!

「よぉし、やるよ黒田!」
「っしゃ!...って、何をだよ!
 東堂さんの口上ならやらねーかんな!?」



モノクロ*ノーツ 15
黒猫と白猫のコント / 2017.10.25

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