緑色を見つめるだけの日々は長らく続き、季節は冬に、春になって、また夏がやってきた。
あっという間に1年が過ぎ去ったけど、私と彼の距離は変わることなく更に季節は巡ってくーーー


彼を見つけてから2回目の春を迎えて、3年生に上がった私に運命の転機が訪れる。
クラスが変わり、3年4組に割り振られた私が新しい教室に足を踏み入れると、見つめ続けてた緑が開け放たれた窓の前で揺れていた。
まさか同じクラスになれるなんて思ってなくて、幻覚でも見ているのかと目をごしごし擦ってみたけど、指の隙間から見る緑は緑のまま、変わらずそこにある。
短かった髪の毛は2年と少し見ている間にシャープな輪郭がすっかり隠れるくらい長く伸び、物憂げに頬杖をつく彼と一瞬目が合って私は息を飲んだけど、その視線はすぐ窓の外へ逃げてった。
結局それから彼と目が合うことも言葉を交わすこともなく一方的に私が彼を見つめるばかりであっさりと1週間が過ぎた。
今日も窓際で日に透ける緑髪、窓の外を眺めながらうずうずと身体を揺らして、終業前の彼は一日で一番生き生きしているよう私には見える。
このまま何も変わらず卒業を迎えてしまうのかな、折角そこに彼が居るのに何も出来ずにただ見ているだけで...
そんなことをぼんやりと考えている間に帰りのHRが終わって、たまたま私の横を通って教室を出て行こうとしていた彼のブレザーの端を私の手が捕まえた。
見てるだけ?ううん、そんなの勿体無い。
チャンスがないなら作ればいいじゃないか。私はもっと、彼を知りたい。

「...あー、え?と、何...?」

こっちを見ないかなって、振り返ってくれないかなってずっと思ってた濃紺の瞳が私を見下ろす。初めて間近で見る巻島くんは困惑の表情を浮かべていて、大きくハの字に下がる眉毛の下の泣きぼくろが余計物憂げな雰囲気を醸し出していた。

「ばいばい巻島くん、また明日」
「あ、あぁ、また明日...?」

突然挨拶をされた巻島くんは腑に落ちないみたいな顔をしながらも、ぎこちなく私に挨拶を返して教室を出て行った。猫背気味の背中が見えなくなって、私の中の巻島くんのページに新しい彼の姿が刻まれる。
明日も挨拶したら、巻島くんはどんな顔をするんだろう...
高鳴る心臓、その奥でふつふつと何かが湧き上がる。
それがきっかけで、
私は毎日欠かさず彼に挨拶をすることにしたのだ。



サイハテ 05
3年4組 / 2017.10.15

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