週末は幸い晴れて、美鈴湖の大会は無事に終わった。
大学2年目のインカレは優勝こそ出来なかったものの、まぁ中々悪くない結果だったと思う。
なんて言うかバァカ、1位じゃなきゃ意味ねンだよ!
ぎりぎり表彰台ってのが余計悔しいつーかなんつーか、念願のインカレ優勝を目指して今日からまたひたすらペダルを回す日々が始まる、と言いたいとこだがオレのビアンキは今メンテ中でバラバラに分解されている。
負けた後はいつもに増してぶん回したい気分になるのに、これじゃ消化不良もいいとこだ。
とはいえメンテも仕事だからっつってメカニックにそれを預けて、多少の苛々と共に今日のところは大人しく帰宅することにした。昨日の大会でちっと疲れてたってのも理由の一つではある。
傘も持たずに駅までの道を歩くのはいつぶりか、傾いてきた日射しに目を細めながらオレはゆっくりと駅へ続く長い坂を下っていった。

改札を通り抜けてホームへの階段を登りきると、電車を待つ乗客はまばらだった。
どうして今日はこんなにも人が少ねーんだって思ったのは一瞬で、すぐに今日が雨の日じゃねェからだと気付く。
電車が来るまであと何分だ?
電光掲示板を見上げると、光る数字のその先にちらっと白い影が見えた。背筋をピンと伸ばしてベンチに腰掛ける白セーラーは、開いたテキストをじっと見つめながら眉間に皺を寄せている。
なんつー顔してんだ白崎チャン、せっかくのカワイイ顔が台無しだヨ。
その姿を遠巻きで見ていると、パッと目を見開いて何か閃いたように、かと思えばまた険しい表情を浮かべて首を傾げた。
おもしれェ、百面相かよ白崎チャン。
こみ上げてくる笑いを抑えながら、オレはなおもコロコロ表情を変える白崎チャンのもとへと進む。数2Bと書かれたそれに釘付けの白崎チャンはオレの存在に気付かねェ。近付いてじっと見下ろしてみても、まだ。
一言声をかけりゃいいもんを、ここまできたらいつオレに気付いてくれんのかなってちょっとした好奇心が生まれたりして、そっと隣のベンチに座ってみる。
そこまですりゃ流石の白崎チャンも人の気配を察して顔を上げる。恐る恐るこっちを見る白崎チャンの横目と目が合った。

「んん...ん?えっ、荒っ、なっ...えぇ??」



AとJK 4-1
百面相少女 / 2017.09.27

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