窓から差し込む夕日に照らされて、カーテンレールにぶら下がる逆てるてる坊主が茜色に染まっている。
静かに部屋の扉を閉めてからベッドに駆け寄り、私はそのままそこへダイブした。ボスンと鈍い音と共に鞄と身体がベッドにめりこんで、跳ねるスプリングに揺られながら私はそっと目を閉じる。
瞼の裏で鮮明に思い起こされる今日の出来事に身悶えずにはいられなくて、私はバタバタと無駄に手足を動かしている。こんな姿をもし誰かに見られたら恥ずかしくて死んでしまうかもしれない。いやもう私は死んでしまう寸前だ。
恥ずかしくて、ではなく、幸せ過ぎて。
荒北さんと電車に乗り、空いてた席に私だけ座らされて、私の目の前で吊り輪にぶら下がるスラッと細長くて少し気怠げな荒北さんの姿が目に焼き付いている。

「あ、もう着いちまった、喋ってっとはえーなァ
 んじゃまたな白崎チャン、気を付けて帰れよォ?」

目を細めて軽く笑って荒北さんは私の頭をポンとひと撫ですると、そう言い残して電車を降りてった。
私は何て返事を返したんだっけ、ただ一言、はい、としか言えなかったような気がする。
ふわふわした足取りで帰宅して、今もまだ頭の中はふわふわしてる。
...またな、だって。また、があるのかな?
また一緒に帰ってもらえるのかな?
荒北さんの感触を思い出すように頭のてっぺんを自分の手で撫でてみる。ここに荒北さんの手が触れたんだ...
胸の奥が締め付けられるように痛い、本当に死んでしまいそう。
ころんと転がりうつ伏せから仰向けに体勢を変え、天井を見上げ大きく息を吸い込んで、ゆっくりと息を吐く。
少し落ち着いたところで身体を起こして、私は鞄の中から小さなペットボトルを取り出した。
荒北さんがくれた、レモンティーの黄色いボトル。

「もったいなくて、飲めないなぁ...」

ぎゅっとそれを胸に抱いて再びベッドに倒れ込むと、透き通った薄茶色の液体がちゃぷんと揺れた。
目に浮かぶ荒北さんはいつだって格好良くて、思い起こせば思い起こすほど心臓が激しく高鳴る。
ベッドの上をのたうち回って制服も髪の毛もくしゃくしゃだ、でもそんなのどうだっていいや。今はただ幸せの余韻に、

「っあ!!」

浸ってる場合じゃない!
私、荒北さんにお礼言ってない!!
勢いよく起き上がって鞄の中の携帯電話を捕まえて、メール、今すぐ荒北さんにメールを送らなきゃーーー

『今日はありがとうございました
 お茶まで頂いたのに、私お礼言いそびれて...
 すみません...
 今日も楽しかったです、またお話聞かせて下さい
 週末晴れるといいですね、陰ながら応援してます』



AとJK 3-6
茜色に染まる / 2017.09.21

←3-53.5-1→
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -