「ったくめんどくせんだヨ、雨の日ってヤツはァ」

どんよりと暗い空から降ってくる雨粒は無限で、今日は丸一日傘を手放せそうにない。畳んだビニール傘に付着した水滴のせいでびしょ濡れになった手を見つめ、荒北靖友は大きな溜め息とともに呟く。
当然ハンカチなんて物を持っているわけもなく、とはいえこのままにしておく訳にもいかないので、濡れた手は腰のあたりにぐいと押し付け自身の衣類をそれの代わりにした。

自分と同じく雨の日のみ電車を利用する人々のお陰で、駅は見るだけで吐き気がしそうな混雑ぶりだった。
地元横浜にいた時に比べれば大した通勤通学ラッシュじゃないのは明らかだが、快適自転車通学ライフを満喫している彼にとっては地獄なようなものである。
解放感など一切皆無、まとわりつく湿気が不快指数をぐんぐん上げていく。

券売機の列に渋々並んでやっとのことチケットを入手し、ホームまでの流れに乗るが亀のような歩みにイライラが募る。眉間にしわを寄せて不機嫌アピールをしたところでスピードが上がるわけもなく、目当ての電車が到着した頃ちょうどホームにたどり着いたものの、彼のメンタルゲージは大幅に削られていた。

(何が楽しくて満員電車に乗んなきゃなんねンだ、
 バカかよ!!)

声を大にして叫んでやりたいが、舌打ちをして悪態を吐くだけで耐えた。
さらなる乗車を受け入れようと乗降扉は開いたが、この中に入っていく勇気は出したくない。けれどもここまで来て乗らないわけにもいかないし、彼の後方に控える人はじりじりと距離を詰めてくる。
本日何度目になるやらわからない溜め息をつき、密集した人をかき分け反対側の乗降口付近に陣取った。



AとJK 1-2
雨の日の憂鬱 / 2017.04.29

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