「ん、まぁ、なんつーか...責任は、取るッショ」

不穏な空気を感じ取ってか、裕介くんはマグカップをテーブルに置くと唐突にそう言った。
コーヒーの最後の一口を体の中に流し込んで、私もカップをそっとソーサーの上に戻す。静まり返った部屋の中、カチャリと陶器のぶつかる音がやたら大きく感じられた。

「...責任って?」
「つ、付き合う、とか...そういうの...」

私を見ることもせずに、裕介くんはもごもご言いつつ口元を人差し指でぽりぽり掻いた。
責任?責任ってなんの?
昨日のことに関してなら喧嘩両成敗、とはちょっと違うけどどっちが悪いとかいうものでもないし、どちらが悪いかどうしても決めないといけないんだとしたら6対4、いや7対3くらいの比率で私が悪い。裕介くんはいわば被害者だ。
あぁもしかして避妊をしなかったことに対しての責任だろうか?そういえば裕介くんは私がピルを常飲していることを知らないから、そういった責任のことを指しているのかもしれない。
責任、か...
忘れたくない、忘れてほしくない。裕介くんの側に居ていいっていうのなら側に居たい。でも、

「そんな責任、なくっていいんだよ裕介くん...」

付き合おうって言われているはずなのに、言われたかったはずなのに、胸がぎゅうぎゅう締め付けられてるみたいに痛い。
私が傷付くなんて御門違いなのも分かってる、ここで泣くのもルール違反だ。目頭が熱くなっていくけど目を閉じてどうにか耐えて、笑って言うって決めてたでしょう千歳。
今が、それを言う時だ。

「だから、昨日のことは忘れて、」
「良くない」
「私はそれがいいと思、」
「オレが、良くないんショ!」

全部を言い切る前に、裕介くんは私の言葉を遮った。初めて聞く裕介くんの大きな声に圧倒される。
なんで?怒ってるの?
責任なんて取らなくていいって言ってるだけなのに、真剣な顔して裕介くんは私を見ている。そんな顔してそんな言い方、期待させないでよ裕介くん...
裕介くんの顔を見てられなくて、私は視線を下に落として俯いた。これは言ってはいけない言葉だ、でも溢れ出てくる想いが止められなくて、そこにあった裕介くんの手に指を絡ませながら私は小さく彼に呟く。

「ねぇ、裕介くん
 私、裕介くんのことまだ全然知らないけど
 好きになったって言ったら、信じてくれる...?」



Jack spider 15
responsibility / 2017.07.12

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