05



10分休みにトイレへ駆け込む。チャイムが鳴り終わると同時に。何気ない顔してトイレに小走り。授業中、突然行きたくなってきて焦りに焦った。長々と喋る数学教師の言葉にうなずきながらも、はやく終われよ! と脳内で怒鳴り散らした。
ようやくトイレに到着すると制服のベルトを外し、社会の窓からチンコを出して用を足そうとした瞬間、後ろから手を回された。
俺の方は油断しまくりだったから、一瞬何が起こったか理解出来なくて。当然だろう。ションベン中なんて人間が最も無防備になる瞬間じゃねぇか。加えてここは学校のトイレ。目立った不良がいない青葉城西で今からションベンを放出しようとする奴を背後から襲うなんてリスクの高い真似をしようとする奴、いるわけがねぇ。俺は首根っこをつかめれ、個室へと押し込められた。

「おい! クソ川!」

引き込んだ野郎が誰なのかなんてことは、一瞬で分かった。嗅ぎ慣れた香りが鼻腔を過ったからだ。
幼い頃から傍にいて「岩ちゃんの香りって臭いよね」と失礼極まりない科白を吐き出してくる男の香りが女子受けが良い爽やかな柑橘系の香水だということは知っている。朝、制服に吹き付けられた香水は部活中になっても汗の香りと混じらず、良い香りだけが漂っている。
まさか、トイレで嗅ぐ破目になるとは予想してなかったけどな。

「へへ、岩ちゃん」
「へへじゃねぇよ。トイレ中なんだが。漏れそうだからどけ」
「あ、やっぱり漏れそう?」
「当たり前だろう!」

今から切羽づまった股間を解放してやる所だったのだ。尿道をとおってションベンが下がってきている。気を抜けば漏らしてしまいそうだ。

「ヤダ」
「このクズ!」

及川の頭を思いっきり殴る。手加減は控えめだ。漏らしそうで手加減どころの話ではない。
それでも及川は扉の前から退かなかった。どうせエロイことが目的なんだろうけど、その執念にちょっと引きそうになるんだが。
退かないなら、便器はこっちにもあるし、及川に排尿する所を見られるのは癪だが、どうせこのまま我慢した所で、恥ずかしい科白を言わされて排尿できるよう懇願する自分の姿が目に見える。ならば、率先してこの股間を解放してやって方が良い。
そう判断して及川に背を向けたのが悪かった。
背を向けた瞬間、及川は俺の両手を握って股間を掴んできた。

「おい、触るなって! ションベンかかっても知らねぇぞ!」
「なんで、俺の前で恥ずかしげもなく、しちゃうわけ!?」
「何年一緒に居ると思ってんだよ! お前が漏らした所も見たことあるぞ俺」
「わ――今、ここでその話し、持ち出すなんて反則だよ岩ちゃん!」

何故か及川が恥ずかしそうに喚いた。小学校低学年の時、スポ少の遠征に参加した俺たちは一緒の部屋だったわけだが、夜中に及川に揺すり起こされたと思うと、大きなオネショが及川の布団に残されていた。「どうしよう岩ちゃん」と泣きべそをかく及川に「寝る前にお茶飲みすぎなんだよ」と叱咤をして一緒にオネショがバレないように片付けてやった。
そもそも、男同士。トイレに設置されている便器は、一応チンコを隠す仕様になっているが、覗こうと思えば覗ける。排尿するのを見せるのは恥ずかしいが、及川なら今さらか……――という気持ちの方が強い。そこに性的な欲求が加わっていないなら、そうやって流すことが出来ると判断したのだが、恥ずかしさから立ち直った及川は、俺のチンコに直接触れ、溢れかえりそうになっているチンコを堰き止めた。

「ちょ、てめぇ」
「おしっこが出る直前ってすっごく感じちゃうんだって」
「知るか! 離せ!」
「ヤダ」

言い切った及川はポケットの中からゴムを出してきた。先端からゴムをくるくる丸め輪ゴムのような形にすると破裂寸前の俺のチンコに巻きやがった。

「テメェっ! おい、やめろ」

オシッコ出した過ぎて力が入らねぇ。いつもだったら全力で薙ぎ払って、扉にその綺麗な顔をぶつけてやるのに。及川に拘束されたまま、膝の力が抜けてきた。

「はぁ、岩ちゃんったら可愛い」
「可愛くねぇ! てめぇの眼は節穴か」
「可愛いよ。すっごく。犯したいくらいに」

そりゃどうも、と俺がなる筈もなく、及川の掌が俺の身体を弄った。調子の良い科白ばかりテメェは吐き出しやがって。他のヤツにも可愛いとか言ってんだろうが。
下腹部からじょじょに手があがってきて、乳首に触れる。整えられた爪が俺の乳首を引っ掻いて、むず痒い。
腰のあたりからマジで力が抜けていく。放尿したいという願望だけが身体の神経を駆け巡っている。

「気持ち良いでしょう岩ちゃん」
「気持ち良くねぇっ」
「え――今の状況でその嘘はキツいよ。素直にいえば優しい及川さんは許してあげようかとおもったのに」
「気持ちいです、許して下さい」
「岩ちゃん、プライドどこやったの!」
「プライドより俺のチンコがやべぇんだよ!」

悟れ! と怒鳴ったが及川に対して効果はなかった。

「そんな我儘いう子にはお仕置きだよ」

お前のポケットは四次元ポケットか! とツッコみを入れたくなったが、及川はポケットからいわゆる大人の玩具を取り出した。俺が判別できるのは大人の玩具というだけで、それをどう利用するのか知らなかった。

「あ、未知の道具? これはね、尿道バイブっていうんだよ岩ちゃん」
「にょ、尿道……」
「そう、尿道。今から岩ちゃんの尿道にお邪魔するからね」

ムリムリムリムリ!
なに言ってんだ。正気か! そんなデケェもんが俺のチンコに入るわけねぇだろう。どれだけマニアックな趣味してんだよ。突っ込まれた瞬間、痛みで失神するに決まってるだろう。

「止めろ、及川」

尋常じゃない畏怖の存在に俺はガチで震えあがる。冗談じゃねぇ、止めてくれ。身体が無理だと訴えているのに、及川はローションを(これまたポケットから取り出していた)尿道バイブに塗りたくって、俺のチンコへ突き刺した。

「始めアナルに俺のおちんちんが挿入できるって思ってなかったでしょう」

及川が耳朶を甘噛みしながら囁く。
そりゃぁ、俺のケツにお前のチンコが入って合体できるなんて想像すらしてなかったが。

「今はちゃぁんと、岩ちゃん喜んでるから大丈夫だよ。善がっている自分の姿、思い出してみて」

過去の自分が脳内に浮かび上がる。風呂の中で及川とシた時の光景だ。鏡の中に映った俺の姿は乱れていた。気持ちが良いと全身の毛孔が叫ぶように、善がって顔を真っ赤にして快楽に覚えていた。

「っ――ぁイぁ」

尿道バイブが俺のチンコにはいってくる。潤滑油の力を借りているが、孔が無理をして広がっていく感覚に皮が引っ張られる。
及川は多少強引に尿道バイブを全部入れて、俺が静止する声もきかずにスイッチをいれた。

「ひっ――あぁっ――」

知ってるか。
お前は知ってるだろう。男っていうのは、ションベンしたいときは快楽が倍増する生き物なんだってことを。
ヤバい。痛いのに気持ちが良い。チンコの中で精液とオシッコが循環して暴れまくっている。素直じゃない俺の股間が疼いて勃起している。もう、出したい。出したいっていうことしか考えられなくなる。
及川とセックスするとこれが怖い。普段の俺じゃなくなっていくみてぇな感覚が常に付きまとう。快楽というのは魔物だ。俺を食べる。

「っ――も、出させてくれっ」
「もうちょっと我慢しよ、岩ちゃん」
「くっ――人の気持ちもしらねぇで」

及川がズボンを下ろして、俺の後孔にローションを塗って、挿入してきた。だから、なんでお前は俺の痴態を見ていつも戦闘態勢のチンコになんだよ。

「人の気持ちを知らないのは岩ちゃんでしょう」
「はぁっ、ひっぁ――」
「もう、俺、怒っちゃうよ」

尿道バイブの回転があがる。及川のチンコは俺の肉壁を劈くように腰を動かしてくる。及川が律動するたびに、自分の身体が揺れて、頭の中もチンコも爆発しそうになる。すっかり開発されてしまった前立腺が震える。俺の中で、渦を巻いている。

「頼むっぁ、及川、ださ、せろっぁ」
「ぐちゃぐちゃの岩ちゃん可愛い」

涙が出てきた俺の顔を及川の長い舌が舐める。余裕がくなってきているコイツの顔は凄く好きだし、同じ男として溜らない性的欲求が満たされる瞬間だが、どうしてだろう。今の及川の顔はいつもより切羽詰まっていて、切ないものが混入しているようだった。

「今、出させてあげるからね」
「っぁ―――!」

及川が回転したままの尿道バイブを俺のチンコからコンドームと一緒に抜いた。今まで堰き止めていたものが無くなり、尿道を俺のションベンが解放へ向かい走っている。その後に続くように精液が吐き出された。

「はぁっぁはぁ……」

便器に吐き出されたションベンと精液の残骸を肩で息をしながら虚しい気持ちになる。学校で、しかも授業中に(知らない間に鐘は絶対に鳴っているだろう)なにしてんだ、俺等は。アホか。間違いねぇな。アホだな。

「気持ち良かったね岩ちゃん。またしよう」
「死ね、クソ川!」

殴ろうと思って振り返ると未だ後孔に入っていたチンコのせいで、喘がされた。


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