02


俺が及川にケツを掘られたのは、中学三年生を卒業した春のことだった。
高校に所属しているのか、中学に所属しているのか曖昧な、春休み。推薦入試だった俺と及川は青葉城西の練習に参加させてもらっていたが、入部前ということで早めに帰らされたり、休みが多かった。その日も、俺と及川はフリーで及川の家に屯っていた。
中学一年生の時に起こした過ちから、互いにマスを掻きあうことが既に日常となりつつあった俺たちは(そのことに対して及川に文句を告げるたびに「いいじゃん、気持ち良いんだから」と「岩ちゃんって流されやすいよね」という言葉を貰う。イラつくので殴っておく)誰もいない及川の部屋に集まる、イコール、AVでも見ながら抜きあいっこするか、という流れになった。
下着が汚れるのが嫌だから、素っ裸になり、AVを装着する。AVは先輩の伝手だったり、ネットでレンタルしたりと、色々と裏道をとおって手に入れたものだ。一応、家を提供するヤツがAVも提供する決まりが自然と出来ていて、及川にAVを――と手を伸ばすと、へらりと笑われた。アア゛なんだ、その顔。

「今日はないよ、岩ちゃん」
「だったら、どれで抜くんだよ」
「え――俺で」
「無理だよ。キモイ」


及川の無茶ぶりに唖然とし、絶句を決め込み、今日は衣服を着て帰るかとしたら、手首を掴まれ、ベッドへと引き摺りこまれた。

「クソ川、なんのつもりだよ」
「ここで、その呼び方! まぁ、良いけど。一回くらい試してみよいよ」
「断る!」
「気持ち良いかもよ」
「気持ち良くねぇよ。お前じゃ勃たねぇ」
「わからないって」

なぜか強気な及川は俺の手首を脱ぎ散らかした制服のネクタイで縛り上げた。強引に実行するつもりかと、腰を動かして、足で俺の上に跨る及川を蹴り上げようとしたが、交わされ、反撃は虚しく終わった。
頭上でひとまとめにされ、ベッドに固定された俺の腕。上手に縛られている。どこで、こんなテク身に着けたんだよ。

「アナル一回掘ってみたいんだ」

拘束した後で、わざと俺の血が引く発言を落とした。アナル掘ってみたいんだ……アナル掘ってみたいんだ……アナル掘ってみたいんだ……脳内でエコーがかかってる。反響しており、すげぇ数になってる。
アナルがどこか純情過ぎる学生でもない俺は理解できる。ケツのことだ。コイツはケツ孔にチンコをぶっ刺したいとか、頭の螺旋がぶっ飛んだ言葉を告げてきているのだ。

「まてまて、早まるな及川」
「早まってないよ! 俺は真剣なのに」
「真剣なのか。尚更、悪い!」

素っ裸で拘束された俺の防御力はとても低い。
及川にチンコを握られた。萎えている俺のチンコを強制的に発情期状態へ持っていくため、及川は手首を上下に動かす。
さきほどは、去勢を張って「勃たねぇ」と叫んだが、悲しいことに慣れ親しんだ及川の手に俺のチンコは反応し始めた。

「――っ」
「ほら、もう半勃ちだよ。可愛い――岩ちゃんのチンコ」
「っ、うっせ、触んな」
「喘いでくれて良いのに」

頬っぺたを膨らませながら、及川は俺のチンコを触る。女子みてぇに長い睫毛がついた顔が、俺のチンコ近くにきて、舌先を伸ばされた。
コイツ、舐める気か―――! 覚悟を決め、及川のフェラに耐えようとしたが、舐められなかった。
拍子抜けしてしまい。間抜けな顔をして固まっている俺を見て、及川は爆笑した。
コイツ、終わったら覚悟しとけよ。

「期待しちゃったんだ、岩ちゃん。さっきより、膨らんでいるし」
「っ――ん」
「イっちゃうつもりだったんでしょう。ダメ。一回イくつ疲れちゃうから。もうちょっと我慢ね。舐めるのも。後でいっぱいしてあげるから」
「いら、ねぇっよ――はな、せ」
「気持ち良いから大丈夫だって」

おい待て、コラ。
若干、これってレイプなんじゃねぇの? っていう恐ろしい予感が脳裏をよぎるが及川の顔を見て首を振る。コイツが、俺が本当に嫌がっていることをする奴とは思えない。やはり、心のどこかで、まだ見ぬ快楽を追及している俺がいるということなのだ。本気で嫌がったら、止めてくれる筈だろうしな。

「あ、納得してくれた?」
「痛いってなったら、止めろよ」
「要相談かな」

イヤイヤ、そこは止めろよ。
俺は心の中でツッコミながらも、及川がとある物を学習机の引き出しから、出したのを見る。じっと眺めてみていた俺は香水瓶のようなボトルに入った液体の正体を悟る。
AVで良く見る液体だ。

「ローションか」
「御名答。岩ちゃんったらエッチ」
「そんな液体、準備しておいて、どの口がそれを言うんだよ」

どこで購入したんだ。餓鬼にドラックストアやコンビニの店員が売ってくれるのか。及川だったら一目見ただけじゃ、私服を着ていれば大学生に見えなくもない。つ――か、お願いだから私服で行っておけよ。部活終わりとかに立ち寄ってんじゃねぇぞ。

「あ、これはネット通販で評価が高かったものだから、安心してね」
「ネットかよ……そりゃよかった」
「え――そんな反応? せっかく岩ちゃんに気持ち良くなって欲しくて購入したのに」

この計画犯が!
そうこう言っているうちにローションの先端が俺の後孔へ突き立てたれて、押されると同時に冷たいローションが内壁へと入ってきて、身体が震える。

「ひっ――!」
「これ、全部入れちゃうくらいの勢いじゃなかったら始めは無理みたいだよ」
「っ――はぁ、女と違って漏れねぇからな」
「シリの穴だからね。ん―――けど、良いや」

ボトルが空になるくらいの勢いで押し込まれた俺の腹はちょっと膨らんでいるような気もする。歪で気持ち悪い。
しかし、お蔭で及川の指を一本、難なく受け入れた。ローションが上手に潤滑油の役割を果たしているのだ。

「うん、これだったらイけそうだね岩ちゃん」
「っ――なんか、変な感じ」
「使ったことない場所だもん。ピンクで綺麗だよ」
「血を吐きたくなるような科白は止めろ」

イケメンにしか許されない言葉に俺は気持ち悪くなる寸前だ。
肉壁の襞を広めるようにして、及川は指先で円を描き、隙間から一気に指を三本へと増やした。

「――っぁ――ん、い」
「痛い? 岩ちゃん」
「痛くねぇけど、りょ、量が」
「ああ、増えたから驚いちゃった? けど、さすが評判が良いだけあって良く滑るし、切れてもないよ」

三本の指が俺の中で暴れはじめる。
無造作に乱雑な動きを見せていたかとおもえば、ある一点を探す用にして、指がゆっくりと這え摺りまわった。
俺はそのたびに、もどかしいような、喉元につまったものを解放したい欲求で眩暈がしてくる。

「ひっ――ぁ、なんだ、よ、今の!」

奥の方に潜んでいたしこりに及川の指が触れた。
腰が宙へと飛び跳ねるみてぇに反応をお越し、俺の眼は強烈な快楽に電撃をお浴びたみたいに、瞬きを繰り返す。

「っ――ぁ、そこ、キモイ、さわんな」
「キモイんじゃなくて、気持ち良いんだって」
「ちがっ――ぁ、っん――」
「男同士でやる時はここが気持ち良いかが大事なんだってさ。前立腺っていうんだよ。ああ、よかった。岩ちゃんが感じるタイプの人間で」

良かったじゃねぇよ。
俺の中で判ってるのは、ソープへ通ってアナルマッサージしてもらう男の気持ちが理解できたくらいで、そんなもん、まったく嬉しくねぇよ。

「ひっ――マジ、やめろ」
「止めないって。今回の目的達成への大きな一歩だよ」
「んな一歩望んでねぇよ」
「俺のは、早く岩ちゃんにいれたくてしょうがないって叫んでるけど」

そう言って及川のチンコに注目すると勃起している。え、俺の痴態みてお前興奮出来るわけ。引くんですけど。なんでだよ。いや、お前にチンコとケツ弄られて喘いでいる俺が言えた科白じゃねぇが。

「っ――ぁ、ひっ――も」
「これ、気持ち良くない?」

前立腺を二本の指で挟まれて揺すられる。
快楽を直接コントロールされているみたいで、俺の口からは嬌声しか出てこない。先ほど、突かれていた時とは別の快楽が生まれている。別っていうか、それを超えるものだ。

「ぁ――ひっん――も、いれたいんだったら、さっさと入れろよ!」

今にも爆発しそうなチンコ見せやがって。
あと、正直にいうと、この快楽を持続して指先にて責められると、俺の身体が持たない。

「誘われたら、いただいちゃう主義だけど良い?」
「さっさとしろ!」

声を張り上げて怒鳴ると、及川の太くて長い(男の俺よりも立派なものが下半身にぶら下がっているので、嫉妬したくなる)チンコが指で拡げられた後孔へ装着された。

「ひっ―――あぁん――ん」

ずちゅぶしゅずちゅうちゅ!!!
ローションの激しい滑りを借りて、後孔へと挿入された。俺の皮が限界にまで広げられて、ローションの手助けなしでは切れて大惨事を巻き起こしていただろう。しかし、そんなこともなく、及川のチンコが俺の前立腺目掛けて突かれる。

「っ――ぁ、も、なんだ、よコレっ」
「岩ちゃんが、感じまくってるってことだよ」
「うるせっ――ぁあ、ひっぁん」

及川が腰の動きを早くすると共に身体が飛びあがった。
皮膚と皮膚がぶつかりあって、パァン、パァン! という音が夕暮れ時の室内に響き渡る。
思い返せば、まだ昼間なのだという新事実に新たな羞恥が加えられるが、そんなこと考え指す暇を与えないというように、及川のチンコが最奥を突き、射精した。





肩で息をする俺を拘束していたネクタイを外し「もう一回しよ」と告げる及川を容赦なく頭突きしろ。ザマァ見ろ。


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