世界で一番好きな人

友人達と遊びに行った帰り、偶然街で二人を見かけた。
誰よりも何よりも愛していた人...
土方君だって、俺のことを愛してくれていた。
でも、俺よりも好きな人が出来ちゃったんだよね。
土方君の隣で幸せそうに笑うあの子が土方君が言っていた彼女。
お似合いだったことよりもずっと見たことのない土方君の笑顔が悔しかった。
二人、手を繋ぎながら笑い合っていて周りを行き交う人達は必ず彼らを見る。
それほどにまで、二人は輝いていた。
俺はそんな二人を見ているのが辛くて、走ってその場を逃げた。
どうして、俺じゃだめなの?
どうして、土方君じゃなくちゃだめなんだろう。

「土方...っ!」

走りながら涙が溢れた。
流れて、流れて、止まらない”涙”...
好きなのに...
こんなにも土方君のことが好きなのに...
どうして、この想いは届かないの?
苦しくて、息も出来なくて...

”好きになってくれる人だけを好きになれたらいいのに”

そうしたら、こんなに苦しむことはないのに。
家に帰ってきた俺は電気もつけず、服も着替えずそのままベッドにダイブした。

「土方君のバカッ」

ずっと、ずっと前から土方君が彼女のことを好きだったのは知ってた。
俺と付き合ってる時も彼女と会ってたのは知ってた。
でも、俺の方から別れを切り出すことは出来なかったんだ。
だって土方君が優しくするから...
バッサリふってくれた方がきっと楽だった。
そしたら、きっぱり土方君のことをあきらめられたのに...

チュンチュンチュン

鳥の鳴き声が聞こえる。
あのまま泣きながら寝てしまったのだろう。
顔を洗ってからコーヒーをいれた。
土方君が好きだった、苦いコーヒー。
真似して俺も飲んでみたけどやっぱり苦かった。
土方君と同じ性格をして同じ顔した人がいたらいいな、なんて苦いコーヒー飲みながら思った。
何度も諦めようとして、何度も嫌いになろうとしてみたけど、無理だった。
土方君を嫌いになるなんて天地がひっくり返っても無理だよ。

「どうしてくれるんだよ、土方...っ!!」

未だにしまっていない土方君とのツーショット写真を握りしめながらそう言った。
後、どれくらい土方君を想い続けられるかな?
淋しくて、声を聞きたくて、泣きそうになるけど、あと、あと少しだけこのままの気持ちでいさせて...
もう少ししたら、土方君のことは忘れるから...
だから、今はまだ、このままで――

「好きだよ、トシ。」


世界で一番好きな人

(”好きだった”あなたはそう言うけど)
(俺はまだあなたのことが”好きだよ”)


奥/華子さんの♪恋という曲をモチーフに書きました!
是非、聞いてみてください^^







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