心が割れた

――人魚姫は声と引き替えに足を手に入れて、愛する人の元へ行った。
けど、王子様が自分を選んでくれなかったら、”泡”となって消えた...
なら、”カラクリドール”の場合、どうなっちゃうのですか?――
朝の8時と夕方5時にいつも俺のことを見ている人がいる。
たくさんの人間がいる中で一際目立って見える黒い人。
いつもじっとこっちを見ている。
だから、俺も見てしまう...
そんなに熱い眼差しで見つめられると俺の心がゆらゆら揺れる。
この想いが何なのか、なんて考えないでもわかった。
けど、この想いは持っていても邪魔なだけ。
毎朝、毎晩、姿を見たって彼に近づくことはできない。
この高い場所から見下ろしているだけ...
誰か助けて、俺の「恋」を――
”初恋”が手の届かね人だなんて、笑っちまう。
けど、彼のことを好きになってしまったんだ...
ある日、真夜中訪ねてきた魔法使いのおばあさん。
おばあさんはこう言った。

「人間に変えてあげるよ二度ともとには戻れないがね。」

俺は、お願いしますと言った。
戻ることなど望みはしない彼のところへ行けるのなら...

...魔法の杖が怪しく光...

次に目を覚ました時、俺はカラクリドールではなかった。
俺のことを見ていた彼と同じ”人間”になっていた。
小さかった世界が大きく見えてなんだか不思議な感じがした。
――朝いつもと同じ時間に彼が現れる。
彼に近づき言葉をかけた。

「俺が誰だかわかる?」

って...
彼は頷いた。

「何でだ!」

と叫んだ。

「本当にお前を愛していたのに。人間なんて寒気がする!返せ、人形のお前を!!」

彼はそれだけ言うと逃げて行った...
言葉の意味がわからない、彼は何て言っていた?
ねぇ、もう一度言って?
わかりやすく説明してよ...っ!!

「どうして...っ」

ただ、彼と話してみたかった。
それだけなのにどうしてこんなことになってしまったの?
彼のために人間になった俺はこれからどうやって生きればいいの?
俺はその場にしゃがみこんで泣いた。
これでもかってくらいに涙が出た...

心が割れた

(お願い神様、嘘だと言って――)









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