一生の思い出
今日の歌舞伎町はいつもの倍くらい盛り上がっている。
理由は花火大会があるからだ。
俺もその花火大会を楽しみにしている人の一人。
だって今日は1ヶ月ぶりに土方に会えるのだから。
楽しみで楽しみで朝から落ち着かなかった。
「銀さん、そんなに落ち着かないなら散歩にでも行ってきたらどうですか?」
「やだー暑いもん。」
「“もん“とか気持ち悪いからやめてください。」
「ハイハイ。」
俺は窓の外を見ながらこの後のことを考えていた。
何を話そうか、何を食べようか、土方に会えるならそれだけで嬉しいのだけれど。いの間に寝ていたのだろうか?
目が覚めると待ち合わせ時間まで後30分になっていた。
「おい、神楽!何で起こさなかったんだよ!!」
「だって銀ちゃん気持ち良さそうに寝てたから。」
「まぁ、間に合うから許してやるよ。んじゃ銀さんはもう行くぜ。」
「りょーかいアル。私も後から行くネ。」
「おう。」
俺はそう言ったと同時に家を出た。
間に合うとは言ったもののここから待ち合わせ場所までは20分くらいかかる。
かなりギリギリだ。早く土方に会いたい。
会って触れたい。声を聞きたい。
「はぁはぁ...。」
走って、走って、辿り着いた場所にはすでに土方がいた。
「ひ、じかた!」
「遅かったじゃねぇか。」
「悪りぃ。」
「別に怒ってねぇよ。ほら行くぞ。」
そう言って土方は手を差し出してきた。
「おうっ!」
久しぶりに触れた土方の温もりは暖かくて優しくてとても安心した。
男と男が手を繋いで歩く様子は回りからみればおかしな光景だろう。
でも、俺達はそんなこと気にしない。
付き合い始めの時は周りの目を気にしていたけど土方が気にするなって言うから気にしないことにした。
「着いたぜ。」
土方が連れてきた場所は小さな丘の上だった。
そこは前に新八と神楽と一緒に流れ星を見た場所と同じ。
「どうした?」
「またここで1つ思い出が出来るなって思ってよ。」
「来たことあんのか?」
「あぁ。前に新八達と流れ星見た。」
「そうだったのか。じゃあ、それ以上の思い出を今日は作ろうぜ?」
「おう!」
俺と土方は丘の上に腰を降ろした。
そっと抱き締めてくる土方。
「なかなか会えなくて悪かったな...。」
「仕事忙しかったんだろ?」
「あぁ...。」
「なら仕方ねぇからキスで許してやる。」
「キスぐらいいくらでもしてやるよ。」
土方はそう言うと俺の唇に自分の唇を重ねた。
久しぶりのキスはとても甘くて幸せだった。
その時――
パーン
と言う音がした。
空を見上げると花火が舞い上がっている。
「すげぇ綺麗...。」
「銀時のが綺麗だ。」
「おまっそう言うことさらっと言うなよ。」
どうしてこういつもいつも土方は恥ずかしいセリフをさらっと言ってしまうのだろうか。こっちの身にもなってみろってんだ。心臓がいくつあっても足りねぇよ。
そんなことを思っていたらまた土方がキスをしてきた。
「もう、何なのお前。」
「キスしろって言ったのは銀時の方だろ?」
「そうだけど...。」
「花火の下でキスなんて最高だろ?」
「まぁ、な。」
夏にしかこんなこと出来ないし...。
いい思い出になるしいいかなんて思っていたら向こうからこっちに向かってくる人影が
見えた。
「ちっ...これからいいところだったのに邪魔が入ったな。」
「いいじゃねぇか。大人数のが楽しいし。」
「銀時がそういうなら...」
俺は人影に向かって手を振った。
そしたら真っ先に神楽が抱きついてきた。
「銀ちゃーん、マヨに変なことされてないアルか?」
「平気だよ。」
「なら安心ネ。」
いつの間にか俺達の周りには近藤、沖田君、山崎君、新八といつものメンバーが集まっていた。
「土方さんだけいい思いはさせませんよ?」
「おい、新八君お妙さんはいないのか?」
「今日は仕事仲間と遊んでますよ。」
「お妙さんー!!!」
「局長どこ行くんですか!!」
いったい近藤と山崎君は何をしに来たのだろう。
神楽と沖田君はケンカし始めるし...。
新八は必死にそれを止めている。
「バカばっかだな。」
「そうだな。」
そう俺が言うと土方はギュッと俺のことを抱きしめ
「愛してる。」
そう囁いた。
「俺も。」
愛の言葉を囁く俺達の上では色とりどりの花火が舞い上がっていた。
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