波の音を聴きながら

蝉の声もだんだんと止んできて、少しずつ秋の匂いを感じるようになってきた夏の終わり。
今年も愛する人と過ごす最後の夏の日がやってきてしまった。
今の生活に不満はない。だけど、離れるのが嫌だと思っている自分もいて・・・
俺は、前を歩く高杉の背中をじっと見つけた。

「何、ぼーっとしてんだよ。置いてくぞ」
「置いてくなっ」

俺は、前を歩く高杉に駆け寄りその手を握った。
高杉はそんな俺の手を握り返してくれて、二人手を繋ぎながら歩いた。
夏の終わりに、俺達は毎年この海に来る。
砂浜に座り、目の前の海を眺める。
茜色の夕日がとても綺麗で、目を細めた。

「・・・なあ、次会うのはいつになるんだろうな」

気づいたらそんなことを口走っていた。
夏の間、毎日一緒にいたから、明日からまた離れ離れになると思うととても不安なんだ。
離れている間に高杉が俺のことなんて忘れて違う奴と付き合ってしまうんじゃないかと思うと一時も離れたくないと思うのが事実で。
だからまだ、離れるまで時間はあるのにもう“次”の話をしてしまう。

「さあな。そんなに俺と離れるのが嫌なら、俺と一緒に来るか?」
「え、」

思わずそう聞き返す俺。
高杉の言葉に少し迷ってしまった。
一緒に来るかというのはつまり、鬼兵隊に入らないかということで、それは、かぶき町の人たちと離れなくてはいけないということ。

「銀時さえその気ならこっちはいつだってお前を迎えいれる準備は出来てる」

どうする?と高杉はいじわるっぽく笑ってそう問いかけてくる。
高杉とずっと一緒にいたい、それは本音だ。
だけど、俺にはバァさんを護るという約束がある。
新八と神楽に給料も渡してやれてねぇし。
何より、かぶき町が大好きで・・・
いつの間にか俺の居場所はあそこになっていた。
だから・・・

「俺、「冗談だよ」

ククっと高杉は笑った。

「え、」
「鬼兵隊にお前はいらねぇ。あんな物騒な世界にお前を巻き込むことなんて出来るわけねぇだろ。俺は、こうやって夏の間、この場所でお前と会う今の生活が気に入っている」
「高杉・・・」
「お前も今の生活が気に入っているんだろ?」
「うん」
「なら、俺の言葉に迷うな。お前がそんなんだとまじで連れ去っちまうぞ」

また、そうやって冗談をいう高杉。
だけど、高杉の言うとおり。
何を迷っているんだろうか、俺は。

「たまには、遊びに来いよ?」
「わかってる。土産もって遊びに行く」
「うん、待ってる」

俺はそう言うと、少し腰を上げて、高杉の唇に自分のそれを重ねた。

「銀時からキスなんて珍しいじゃねぇか」
「うるせぇ・・・っ!!」

顔を真っ赤にした俺を高杉はぎゅうと抱きしめて来た。

「「愛してる」」

波の音を聴きながら、愛の言葉が重なった。









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