救世主

久しぶりに万事屋に依頼が入った。と言ってもただの猫探しだが。だから、1人でいいと新八と神楽に言いようやく仕事をやり終えた。猫探しをバカにしてはダメだと気付いたがもう、時は遅く...。ふらふらになりながら、俺は万事屋への帰り道を歩いていた。雲行きが怪しくなってきたなと思ったらぽつり、と何かが頭に当たった。


「雨か...」


そう思ったがどうやらただの雨ではなかったみたいだ。しばらく歩くと風が強くなり大雨に変わった。そこでようやく朝のお天気お姉さんの言葉を思い出した。


『台風5号が近づいているため、夕方から大雨になる模様です。帰りが遅くなる方は傘を忘れないよう、なるべく早めの帰宅を心がけましょう。』


確かこんなことを言っていた。完璧に忘れていて、深くため息をついた。



ざあぁぁぁ ざあぁぁぁと叩きつけるように雨が降り続き、吹き飛ばされるのではないかと思うほど強い風がふいて、傘なんてきっと意味がない。なら、持ってこなくて正解だ。



「やべぇ、目霞んできた」



誰か、助けて。
そう、願った時だった。
ふらふら歩く俺の横に一台のパトカーが止まった。
虚ろな瞳で隣を見ればよく見知った顔が見えてふっと電源を切ったかのように意識が途切れた−−







あれから何時間立ったのか分からないが俺はゆっくりと瞳を開けた。
さっきまでの冷たさはなく、変わりに暖かさを感じた。
意識を手放した時、一瞬見えたあれは...



「目、覚めたか銀時。」


ああ、やっぱり思った通りの人だった。


「ひじ、かた...」


そう、名前を呼べば土方は優しく微笑み、俺の寝ている傍に腰をおろした。


「たっく、この台風の中何やってたんだよ。」
「仕事帰り...」
「天気予報ちゃんと見ろよ、バカ」


そう言って土方は俺のおでこを叩いた。


「いってぇなぁ。」
「お前が悪い。俺が通らなかったらどうなってたと思ってるんだよ」


心配したんだぞ、バカ。と、土方は小さな声で言った。


「何々、土方くん、そんなに俺のこと心配したの?」
「そーだよ、心配しすぎてどうにかなっちまいそうだったんだよ。」


そう言って、土方はそっぽを向いた。


「ありがと、土方。」
「次は助けてやんねぇぞ。」
「りょーかいっ」


そう、笑えばふわりと抱き締められて、土方の香りに包まれた。


END







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