今も君を想っている

攘夷戦争が終了してもう4年、つまり君がいなくなって4年。
君とは小さい頃からずっと一緒だった。
離れたことなんてなかった。
だから、今この瞬間がすごく寂しい...


「どこにいるんだ、バカ銀...」


何度呟いたわからないその言葉をまた呟いた。
君がいなくなってからも、君を想わない日はなかった。
君のことを想えば想うほど、苦しくなるのに、やめればいいのに、それが出来ない。
君は、どこかで生きているとそう信じているから...


俺は、今日も三味線を奏でながら、君を想う。


昔、君が寝られないとよく弾いていた。
そうすれば、すぐに寝てしまっていた。
君が、大好きだった曲...


べん べん べん


この曲を奏でれば、君が近くにいるような気がした。
ふわりと笑いながら、君が俺の名を呼んでいる気が...


「晋助様!!」


物思いにふけていると、突然来島が部屋に入ってきた。


「うるせェ、何の用だ。」
「白夜叉の居場所がわかったっス!」


来島のその言葉を聞いた瞬間三味線を弾く手が止まった。


「うそじゃねぇだろうなァ?」
「うそじゃないっスよ!!」


来島は、そう言ってから君のことを話始めた。


今、君は江戸のかぶき町という場所にいるらしい。
何でも、”万事屋”という店を営んでいるとか。
・・・まあ、そこまでは君らしいと思った。
けど、あの人嫌いだった君が子どもと一緒にいるなんて、信じられない。


「その話が本当かどうか確かめに行く。」
「今からっスか?!」
「今からだ。万斉に言ってこい。」


来島は不満そうに頷き、部屋を出て行った。



それから、数時間後、江戸についた。


「気をつけてくださいね、晋助様!」
「あぁ。」


素気なくそう言い捨てて、江戸に足を踏みいれた。

朝の町は、静かで誰も歩いていなかった。
ふと空を見上げれば、まだ月が残っていて、昔習った言葉を思い出した。


「朝月夜・・・」


君も見ているのだろうか。
いや、朝が弱い君はまだ寝ているだろう。
口をあけて寝ている君を想像したら、おかしくて笑みが零れた。

港からしばらく歩いたら、ようやく”かぶき町一番街”という看板を見つけた。
そこからまたしばらく歩き、君の名を見つけた。

”万事屋銀ちゃん”

頼まれればなんでもやる店、何とも君らしい・・・
それなら、俺が「戻ってこい」と頼めば、戻って来てくれるのだろうか?
そんなことを想いながら、看板を見上げていれば、ガチャッと扉が開く音が聞こえた。
中から出てきたのは、まぎれもなく君だった。


「銀、時・・・」


美しい銀色の髪は何も変わっていなくて、安心した。

君の後ろから、子どもが2人出てくる。
眼鏡の少年と桃色の髪の少女。


「銀さん、今日の夕飯は良い物食べれそうですね!」
「こいつさえ、変なことしなければな。」
「変なことなんてしないアル!」
「本当かよ。」


仲良さそうに階段を下りてくる3人。
俺はそっと影に隠れた。



久しぶりに、君の笑顔を見た。
やっぱり君の笑顔はいい。
そう思った俺は、静かにその場を離れた。



今も君を想っている
(いつかまた、君と笑える日まで・・・)


2012/05/20/







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