花影にキス
「なぁ、花見行かねぇ?」
ようやく、桜がちらほらと咲き始めた4月。
デートの帰り道、俺はそう土方に聞いた。
「はぁ?夜に、か?」
花見と言ったら昼間、それが土方にとっての常識だったらしい。
確かに、昼間の方があったかいし、それが普通かもしれない。
けど、俺は昼間の桜よりも夜の桜の方が好きだった。
「おう。夜桜見物!」
どう?と笑って見せた。
少しの間の後、土方はわかったと言ってくれた。
何だかすごく嬉しくて、屯所前にも関わらず抱きついてしまった。
「そんなに嬉しいのかよ。」
「すっげぇ嬉しい!!俺、何か作っていくから土方は酒よろしくな!」
「了解です、お姫様。」
「姫じゃねぇし!!」
後でなと手を振って、俺はそそくさと土方の前を去った。
昼間より、少し肌寒い夜、俺は神楽を起こさないようにそっと万事屋を出た。
待ち合わせ場所は万事屋の階段の下なのに、10分も前に外に出てしまった。
それほど、楽しみで仕方なかったのだ。
寒い夜も、土方を待つためなら我慢出来ると思う俺は、自分でもやばいと思うほど土方に依存している。
「銀時」
「土方っ!!」
知り合いに見られるかもしれないというのに、ぎゅうと土方に抱きついた。
よしよしと頭を撫でてくれる土方のその手が気持ちよくて、このまま時が止まってしまえばいいのにって思ってしまった。
「どこで、花見すんだ?」
「こっち!」
こないだ歩いていたら偶然1本の桜の木を見つけた。
とても、とても、綺麗で絶対に土方と2人で来たいと思った。
「ここだよ。」
万事屋から少し歩いた所で、大通りの裏にあるから人通りが少なくて夜桜見物にはもってこいの場所。
ひらり、はらり、桜が舞い散る。
見上げた夜空には無数の星が瞬いていて、月が顔をのぞかせている。
「綺麗、だな。」
「でしょ?!座ろう、土方。」
「あぁ。」
桜の木の下に、腰を下ろし、持ってきた料理と酒を置いた。
「乾杯、するか。」
「おう!」
カンパーイと小さな声でいい、コップとコップがカチンと音を鳴らした。
桜の下で飲む酒は一段とおいしい。
「あ、」
「どうした、銀時?」
「花影だぁ・・・」
ゆらゆらと揺れている桜の花が、月光によって影になっている。
その光景はとても綺麗で・・・・
「花影なんて言葉銀時が知ってるとは思わなかった。」
「俺は、こう見えて頭がいいんですー。それにしても、綺麗だな。」
そっと、土方の肩に頭を乗せれば土方は、俺の手に自分の手を重ねた。
伝わってくる体温は寒さなんか忘れさせてくれるほど暖かくて、そして愛おしかった。
だんだんと睡魔が襲ってきた俺は、そのまま夢の世界へと旅立った。
少ししてから、唇に感じたあのぬくもりはなんだったのだろう。
「おやすみ、銀時。」
甘い、それはきっと・・・・・
花影にキス
(来年も、再来年も、ずっと2人でこうして------)
あとがき
とーちへ相互記念小説です!
い、いかがでしたでしょうか?
落ち着いた?雰囲気の2人を書けた、かなと自分的には思っています。
土銀には桜が似合う!
そして、夜桜が似合うと思います><
勝手なイメージですみません!!
こんなものでよければ煮るなり焼くなり、好きにしちゃってください!
これからも、よろしくね^^♪
*花影
月光などによる花の影。
2012/04/03/
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