赤と青の夢現


やられた。
そう思った時はもう十数人に囲まれていた。
いや数十人いるかもしれない。
とにかくこんなガキ2人を大勢の大人が囲いこんでいる。
ひときわ大きな男が前に出てきた時、シャンクスは無意識にバギーを庇うように一歩前に出た。バギーは舌打ちしてシャンクスを退かせようとしたが、それを無視してシャンクスは更に一歩前に出る。
食料調達の為に立ち寄った島で、下っ端の見習い2人がやることのひとつが買い出しだった。自分達の遊び時間が経るであろうその仕事は、面倒な事も手伝って大抵見習いがやらされる。
一騎当千とも言われるロジャー海賊団の中で、目を付けられるとしたら下っ端でしかもまだ子供の自分達だ。しかし、子供とは言ってもそこいらの大人よりは十分強いと自信は持っているし、周りの気配にも気を使っていたつもりだった。
それがこうもあっさり囲まれるなんて。

「お前ら、ロジャーのとこのガキだよなぁ?」
にやにやと卑下た笑みを顔中に浮かべながら言った男がどうやらリーダー各らしい。
シャンクスはその男をギリと音がする程睨み付け、動きが止まった瞬間を狙って飛びついた。しかし、男に取り付く前に身体が宙を舞った。横から誰かに蹴られた様で、机と椅子をなぎ倒しながら宙を舞った身体が床を転がり、カウンターに跳ね返ってようやく止まる。
シャンクス、とバギーが呼ぶ声が聞こえた。すぐ後にやめろさわるなという悲鳴の様な声。顔を上げようとしたが、降りてきた足に頭が床の上に戻されて、踏みつけられる。投げ出された腕も太い足で踏まれてメキメキと骨が軋む様な音をさせながら床に食い込んだ。
「くそっ、はなせっ」
叫んでもリーダー格の男はにやにやと笑うだけで、更に踏みつけられた腕がミシリと嫌な音をたてる。
頭を押さえられているからバギーがどうなっているのか見ることが出来ない。ただ、騒いでいる声だけは聞こえるから無事ではあるようだ。
足の下から何とか抜け出そうともがき、立ち上がろうとしたとき、がつんと後頭部に衝撃が走った。
「シャンクスっ!」
暗転する意識の中で、バギーが俺を呼ぶ声だけが聞こえていたけれど、それもすぐ聞こえなくなってしまった。



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