甘えたいわけじゃない

三十路エース×子バギーのスペード海賊団パロです


宴会は海賊の常。とはいうものの、違う海賊旗を揚げた船同士が揃って宴会する事はあまりない。それも互いの船を行き交い入り乱れての宴会は、同盟を結んだ船同士ならばいざ知らず、同盟でもなく、どちらかといえば仲の良い方でもなさそうな船ではそう無い事で。
しかしこの場合、仲が悪いと言っても船長同士が実の親子では、半同盟と言っても良い様な気もするけれど。

細かい経過はさておき、何時もの様に酒樽を抱えてふらりとやってきたロジャーの「飲むぞ」の一言で両船そろっての宴会となっていた。一応はそれなりの用件があったらしく、用が終わったならとっとと帰れとロジャーを追い返そうとしていたエースも宴会に関して言えば決してやぶさかではなく、文句を言いながらも気がつけば親子揃って甲板に座り込み酒をかわしている。
そのエースは当然の如くにバギーを自分の隣に座らせていて、バギーはエースと相手船の親父達に囲まれてちびちびと酒を飲んでいた。さすがに実の親子だけあってそれなりに話す事はあるらしい。エースは隣にバギーを置いているものの、バギーを気にした様子もなく何かしら話し込んでいる。大抵は下らない話だったり自慢話みないなものだったりするのだが、たまに真面目な話にもなるらしく、バギーは口も挟まず大人しく話を聞いているしかない。
ジョッキに口を付けながらちらりとエースを伺えば、エースはどうかしたかと自分を見てくれるし、ロジャーも気がつけばぐりぐりとバギーの頭を撫でたりするけれど。でも、船長副船長クラスが集るこの席は、どうも居心地が悪い気がする。それに…。
ジョッキの中身を全て飲み干すと、バギーは酒を取りに行くと言って立ち上がった。転がっている酒瓶の中身はほとんど飲んでしまっているし、まだまだ持ってきたほうがいいだろう。
そう言うと、さっさと踵を返した。エースが何か言った様だけれどそれを無視して食堂へと向かう。
食堂の扉の前でバギーは小さく息を吐いた。
「…ガキくせぇ」
小さく吐き捨てるようにつぶやき、もう一度息を吐く。どうもすっきりしない頭の中身を振り払う様に強く頭を振って食堂の扉に手を駆けた。しかし、大抵の船員は甲板に出ているらしく、食堂は珍しく人気が無い様だ。
食堂よりも酒蔵に行った方がいいか。それともエースの部屋から秘蔵酒を持ってきた方がいいのか迷っていると、バギーと呼ばれて顔を上げた。見れば、ロジャー海賊団の赤毛の見習いが手を振りながらこちらに駆けてくるところで。
「バギーっ」
「どわぁっ」
駆けてくるというより、突っ込んできた。
「探したぜバギー。こんなトコに居たのかよ」
言いながらひっしと抱き付くシャンクスの勢いに押されそのまま2人重なって倒れ込む。
「って何さらすんじゃこのハデアホがっ」
文字通り派手に倒されて怒るバギーだが、シャンクスは悪いと言いながらも何故か楽しそうだ。
「あの親父と一緒だと声もかけられないからな」
「あの親父って、エースの事か?」
「そ」
あの親父、何時も邪魔ばっかりしやがって。
と、シャンクスは言うけれど、どちらかといえば邪魔してるのはシャンクスの方じゃないかと思う。というか。
「退け。ハデボケが」
未だ倒れたままのバギーにシャンクスが乗っかっているという状態。これは正直いただけない。
切り離した手で頭を叩き、ついでに後ろから蹴り落とす。
「いってぇなぁ」
「いてぇのはこっちだ」
このバカが。と悪態を吐きながら立ち上がり、あっちに行けと手を振るがシャンクスには通じてないのかへらへらしていて余計に腹が立つ。
「で、バギーはこんなとこで何してんだ?」
おまけに人の話を聞ききゃしないし、勝手についてくるし。
「何でもいいだろ」
「なー俺と一緒に飲もうぜ。おっさん達と飲んでてもつまんねぇだろ?」
そう言ったシャンクスに、バギーは思わず足を止めていた。



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