雑多に戯れる


ふと目を向けた店先に、目を奪われて立ち止まる。
そこにあったのは、バケツに放り込まれていたのは余った花を寄せ集めたかのようにまとまりの無い小さな花束ともいえない代物で、気が付けばふらりと足が向いていた。


―さて、どうするべきか
透明なフィルムにひと巻きされただけのそれを手に、僅かの間思案する。
Mr.3ことギャルディーノが手にしているのは小さな花の束。
つい先刻、花屋の店先で見つけたそれは、赤黄白紫と雑多な花が混在されひとつにまとめられたもので、一目で売り切ってしまいたい有り合わせである事が見て取れる。
そんなもの、普段ならば興味も関心もないし、そもそも花を買う様な趣味も無い。
確か自分はこの寄港地で紅茶の茶葉を探していたはず。
否、茶葉は無事見つかり手に入れる事が出来た。小さな港町ということであまり期待していなかったが、港から少し離れた街の中に茶葉を取り扱う店があり、思いの外良い茶葉が手に入った。それに気を良くした帰りに何と無しに目を向けたそこに花屋があって、その店先のバケツの中にこの花束が自ら存在を主張するかのようにでんと置かれていたそれに何故か目を奪われたのだ。そうしたら、ふらりと足を向け、気が付けば金を渡して花を受け取っていた。
久しぶりに好みの茶葉が手に入り浮かれていたのだろうか。
それで花を飾りお茶を楽しもうとでも思ったのか。
まさかと頭を振り、けれど買ってしまった花を捨てるわけにもいかず、まぁいいか、とギャルディーノは一度止めた足を港へと向け直した。
どうも思考が誰かさんに似てきている様な気がするが、そこは考えないでおく。
せっかく買った花だから、アルビダにでも渡そうか。でも彼女ならばもっと豪奢な花の方が良いだろう。やはり花瓶を探して自分で活けるか。あの船に花瓶があれば、の話だが。
そんな事を考えながら港へと戻るとオイと頭上から声がした。
見上げれば、ふよふよと見慣れた頭が頭上を舞っている。一見オカルトなその頭がギャルディーノの目の前に来ると、おうと遅れてきた手首が手を上げる。
「遅かったじゃねーか」
そう言いながら目の前を浮遊する顔に、あぁとギャルディーノは息を飲んだ。

雑多でバラバラ。
纏まりが無くて目立ちたがり。
嫌というほど存在を主張するくせにどこか小さくて。
それでいて、目の離せない存在。

なるほどと1人頷くと、ギャルディーノは持っていた花束を無造作に差し出した。
「キミにプレゼントだガネ」
言われたバギーはきょとんと目を開くと、次いで花束に目を落とした。目を細め、ピンと白い花弁を指で弾く。
「ハッ、花なんざ何の足しにもなりゃしねぇ」
と、予想通りの事を言ってくるり船へと戻る頭に、ギャルディーノは密かに微笑んでいた。


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ほのぼの平和な2人もたまにはいいですよね…?
キャプテンはぴばです