本日モ晴天ナリ

02.シャンクスとバギー編(?)


海賊船発見の知らせに、船中に緊張が走った。
グランドラインを警戒航海中の事で、どうやら、その海賊船の骸骨旗の骸骨には左目に3本傷があるらしい。
「なんで新世界にいるはずの赤髪がグランドラインにいるんだよ?」
「それは…」
憮然とするエースに、見張りのクルーは言葉を詰まらせた。
ともかくも、新世界にいるはずの四皇赤髪のシャンクスの船であることは間違いないらしい。となれば、このまま黙って見過ごすという訳にも行かず、エースは気の進まないままに赤髪の船に向かって停船指示を出すように命令した。
「ったく、何で戻ってくるんだよあの野郎は」
ブツブツと文句を言いながらふとみると、さっきまで自分の横にいたはずのバギーが居ない。
「っと、バギーどこ行った?」
あいつ、またひとりで…!
くるり辺りを見回してふと浮かんだ考えに、あわてて司令室を飛び出した。すると水兵がひとりこちらに走ってくるところで。
「大尉!バギーが赤髪の船に!」
「あのバカっ」
水兵を押し退け、エースは甲板へと走っていった。


舳先に仁王立ちして、バギーは目の前の骸骨旗を睨みつけた。左目に3本の傷のある骸骨旗。間違いなく赤髪海賊団の旗だ。こちらは海軍の船だというのに、ゆったりとした速度でその海賊船は近づいてくる。
アイツが居る、とそう思うと居てもたっても居られなくなって、海賊旗を聞いた瞬間、バギーは船室を飛び出してきたのだ。じっとその船を見つめ、他のクルーが止めるのも聞かずに近づく船に飛び移ろうとする。
しかし、バギーよりも先にひらりと赤いものが目の前をかすめた。
「よぉ、チビ。久しぶりだなぁ」
少しでかくなったか?
と、スタンとバギーの前に降り立ちニッと口角をつり上げて笑ったのは、その名の通り赤い髪を持った男、シャンクスで。
「てめぇ誰がチビで赤鼻だとぉっ!」
その台詞ひとつでカッとなったバギーはシャンクスに向かってナイフを投げつけた。しかしわずかに上体を反らす仕草だけでそれを避けられ、軽く甲板を蹴ったシャンクスに気づいた時にはもう間合いに入られた後で、飛び退く前にするりと片腕が腰に巻き付いてくる。
が、シャンクスの腕は空を抱いただけだった。
「そう何度も同じ手に乗るかハデバカがーっ!」
声に顔を上げれば、バギーの上半身がふわふわと頭上に漂っていた。
バラバラの実の能力をもってすれば、てめぇなんかに捕まる事はないのだと豪語し、ナイフの切っ先をシャンクスに突きつける。
「今日こそてめぇを」
「いいな。バギー」
ますます気に入った。
頭上から睨みつけるバギーにニッと笑い返し、シャンクスはひらりとマントをはためかせた。タンと勢い良く甲板を蹴り、飛び上がったシャンクスがバギーに手を伸ばす。その隙をついてバギーは右手首ごとナイフを飛ばした。
まっすぐにシャンクスの眉間へとナイフが飛び、突き刺さる前にバギーの左腕をシャンクスがつかんだ。ぐいと引き寄せられ、ナイフはシャンクスの眉間の数ミリ前で動きを止める。
「てめぇ、何で避けねぇ」
「バギーじゃ俺を倒す事は出来ないからな」
目の前で紅い双眸がすっと細くなった。
避ける事は簡単だ。同時に、捕まえる事も。
目の前の瞳は嫌みにもそう語っていて、バギーはギリと奥歯を噛みしめた。
「このやろっ」
「そこまでだ赤髪」
声と同時に熱が押し寄せてきた。残念、とつぶやいた声と同時にカサリと鼻先に何かが振れ、突き飛ばされる。その瞬間、シャンクスとバギーの間に火柱が走った。甲板の上に投げ出されたバギーの前に、エースが立つ。
「何しにグランドラインに戻って来た、赤髪」
「バギーに会いに?」
「ふざけてんじゃねぇっ」
ごう、と音を立てて炎がシャンクスに向った。シャンクスはそれをひらりと避けて。
「じゃ、今日は帰る事にするよ、バギー」
「待て赤髪ぃっ」
言いながら身軽に船を乗り移ったシャンクスを追おうとしたバギーの首根っこをエースが掴んだ。
「バギー!」
「はい…」
エースに勝手なことをするなと睨まれ、しゅんとなったバギーに赤髪の船から、からからと笑い声が聞こえてきくる。
「バギー、またなー」
ひらひらと手を振るシャンクスに、ブチリと血管が切れたのはバギーかそれともエースか。
「二度と来るなーっ」
「俺様が絶対に捕まえてやるーっ」
二人の叫びが水平線の彼方まで響いていた。










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