本日モ晴天ナリ

01.書類と格闘編(?)


「だあぁぁぁぁぁぁ!」
バサバサっと書類が宙を舞った。
ひらひらと宙を舞う書類が机の上に、床に、そしてバギーの頭の上に落ちてくる。本来この書類を処理すべき人間はすで部屋の中には居らず、全てをバギーに任せて自分はとっととどこかに行ってしまっていた。
「あのハデクソジジイ!書類溜めるなって何時も言ってるだろーが!」
うがーっと大声で叫び、次いではぁと息を吐いた。そうして、自分でぶちまけた書類を自分で拾い集める。拾った書類をひとつにまとめて机の上に置きながら、バギーはまた、はぁと大きなため息を吐いた。
「しかも、始末書ばっかり…」
やれ何を壊しただの、やれ政府の誰それの悪態を吐いただの、そんな実にくだらない書類ばっかりで、この書類を処理すべき人間が、かの英雄であり自分の上司でもある海軍中将ガープだと思うと泣けてくる。しかも、書類はそれだけではなさそうだった。
「こっちは請求書か…」
それは、海軍本部会議室の壁の修理代を請求するもののようで、その金額にバギーはフンと鼻を鳴らした。
「これって、給料から引かれんのかな?」
書類を見ながらそんなことをふと考えたが、すぐに頭を振ってそんなつまらない考えを頭の外に追いやった。どうせ金を取られるのはガープで、自分には関係のないことだ。そんなことより、まずはこの書類の山をなんとかしなくてはならない。
バギーは再び机に向きなると書類に手を伸ばした。ガープのサインの必要なものと必要ないもの、こちらで整理するもの、目を通すだけで良いもの、作成しなくてはならないものなどを仕分けして、手早く片づけてゆく。
どうして自分がこんなことを、とバギーは何時も思うのだが、結局言われた通り片づけてしまう。
バギーはガープの秘書でも側近でもなく、ガープ隊の下っ端海兵である。何をどう気に入られたのかはしらないが、ある日突然ガープに海軍本部に連れてこられ、そのままガープ付きの様な形になって主に書類の整理をさせられている。まぁそのおかげで、こんな下っ端のガキが海軍本部に居られるのだが。

「バギー居るかー!」
黙々と作業して、書類を半分ほど片づけたところで急に扉が開いた。声と、中将の部屋にノックも無しに入ってくるので誰かはすぐにわかる。ガープ隊所属のエース大尉だ。
「ハデに忙しいです」
が、バギーは顔も上げずにぴしゃりと言いきると黙々と手を動かし続けた。
「なんだよつれねぇなぁ赤鼻バギーちゃんは」
「誰が赤鼻の丸鼻だコラ!」
思わず顔を上げると、思った通りエースがにやりと自分を見ていた。
「忙しいってこの書類か?」
こんなもんジジイにさせときゃいいだろうが。
と、そう言ったエースにの鼻先に、バギーはぴらりと書類を突きつけた。
「エース大尉の始末書もあるんですけど?」
「あー、そーだっけか?」
「そーです!」
だったらこれも自分でやってくれ。とエースに書類を渡そうとするのだが、エースはそれをよけると机の上の書類を退けてそこに座った。そうして上から覗き込む様にしてバギーを見下ろす。
「そんなジジイの書類なんかよりさ」
「だから大尉のもあるンすけど」
「…俺のはいいんだよ」
そう言い切ったエースに、良くねぇだろ、とバギーは思う。
エースはガープの孫みたいなものらしいが、どういう関係なのか、バギーは詳しく知らなかった。ただ、上官であるガープに対して敬語を使わないどころか悪態を吐いても大丈夫な間柄ではあるらしい。まぁ上官に対する態度が宜しくないというのは、バギーも同じ様なものだし、ガープ自身が元帥に対してそうなのだけれど。
「ンなことより、俺と遊びにいこーぜバギー」
「だから書類が」
「いいものやるから」
「いいもの?」
ぴくり、とバギーが書類を書いていた手を止めた。それにニッとエースが口角を引き上げ、腰を屈めてバギーの耳元でささやく。
「今日しとめた海賊船からちょっと失敬してきたんだけどな?」
「…そんなことしていいンすか?」
「さぁ?でもバギー、好きだろ?」
言われて思わず黙り込む。
確かに、海賊達が持つ宝石やなんかは好きだけれど。
じ、と知らず上目遣いにエースを見上げれば、エースが何故かうれしそうに口元をニヤケさせた。
その後ろに。
「ほぉ、なにを失敬してきたんじゃ?」
「げっ、ジジイ!」
「中将!」
「エース、お前海軍が何たるか、まだ分かっとらんようじゃな」
「ジジイに言われたくねぇし」
「黙れバカもんが!」
「いでっ」
ガツンとハデな音がしてエースが床とお友達になった様だ。ガープが手を払いながらこのバカがとかなんとか言ってるが、似たもの同士だとバギーは思う。
って、関心している場合じゃなくて。
「中将いいところにきた!これ、サイン!」
今度は逃げられる前にとバギーは書類の山をガープに差し出した。










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