これに名をつけるならば、キミは何と名付けるだろう


何故、と問えば、その深い海の色をした瞳が何の事だと不思議そうに見上げてきた。
何がだ、と聞き返す声は掠れていて、先程までの行為の激しさを物語っている。しかし己を見上げる瞳には先程まで見られた色も艶もなく、好奇心旺盛な子供の様に無邪気なのに、それでいてその奥底に無邪気さとは掛け離れた凶悪さが潜んでいる様で。
事後の気だるい身体を持ち上げ、脱ぎ捨てたシャツを手探りで探す。そんな己に鼻白んでするりと触れる指先を避け、火照った頭を軽く振った。
「何故キミは…」
言いかけた台詞を止め、ぐっと飲み込む。
どうした、早く言えよ。と、ニヤ付く口元を一瞥し、ベッドに戻そうと背中を撫でる手を払って、小さく息を吐いた。
「何でも無いガネ」
事後の爛れた雰囲気を更に険悪にするような質問がナンセンスである事は百も承知だ。
それに、何故、なんて聞いても意味の無いことで。
己の質問に彼が何と答えるか。短い付き合いでもそれくらいは安易に想像出来た。

確かに、身体の相性は抜群に良い。良すぎるくらいだ。それだけに、溺れるのも早かった。
まるでサカリの付いた子供の様に、否、それだけが目的の獣の様にただ互いを求める。それは、愛し合うなんて生易しいものじゃなく、互いを貪り食い尽くす行為そのもので。
それに理由を求めるのは、きっと野暮な事なのだろう。

立ち上がるとギシリとベッドが軋んだ音をたてた。ジッと見詰める視線から逃れるように素早くシャツを身に着ける。
「水を、もらってくるガネ」
多少言い訳じみた台詞を吐き、扉へと向かった。
ギシギシと床を踏みしめ扉に手をかけたその時。
「ギャルディーノ」
呼ばれて振り向けば、ベッドに寝ているはずのバギーの顔が、正しく顔だけが目の前にあった。それが己を嘲笑うかの様にニィっと目を細めぺろりと口元を舐める。
その後触れた唇に、流し込まれたのはとんだ戯言で。
「バギー…」
「俺の分も頼むぜ」
これも切り離した手をひらりと振り、見下ろす口元はにニヤリと形を変えていた。
無言で頷き扉を閉めれば、鼻に付く笑い声がかすかに聞こえた様な気がして、小さく舌を打っていた。


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欲望に忠実な船長は素直に溺れるけど未だ理性が勝る3はこれでいいのかと悩んでみたり
そんな狭くて深い溝のある2人も好きです