欲しいのはキミだけ



「何がさぁ?だ。しっかり部屋まで用意してたくせに」
数日前からシャンクスが宿を取っているという部屋はツインベッドに応接セットもチェアが2脚と明らかにシングル用ではなかった。予想はつけていたものの、最初から準備されていたであろうそれを見せ付けられるのはあまり気分の良いものではない。けれどこんなところまでのこのこと着いてきているのは自分だ。それが一番悔しい。嫌味のひとつも言ってやりたい。
「それとも何か、女でも連れ込んでたか」
「そーいう無粋な事言うなよ」
「うるせぇ」
抱き寄せた肩をするすると撫でる手を払いのけ、バギーはジロリとシャンクスを見遣る。拗ねたように唇を尖らせてはいるが、シャンクスは怒る様子も無く、バギーの腰に手を回すと抱き寄せた。
「バギーだけだ」
「どうだか」
フン、と鼻白むバギーをシャンクスは真面目に見下ろす。
「ホントだぜ?」
「ウソだろ」
「マジで。見習いン時からバギー一筋」
「絶対ウソ、んっ」
すい、と頬を撫でた指先が顎を捉え、上を向かされるとすぐにシャンクスの顔が降りてきた。唇が触れ、それがすぐに深くなる。せめてもの抵抗、と押し返そうとした舌が絡まりくちゅりと音を立てた。
角度を変え執拗に口内を貪る舌に、気がつけば足を払われどさりと2人してベッドに倒れこんでいた。ようやく離れた時にはバギーの息は軽く上っていて、それにシャンクスが満足げに微笑む。
その笑顔に、このまま急所を蹴り上げて出て行ってやろうかとも思うけれど。
けれどスカートの中に入り込んできた手に腿を撫でられそれも叶わず、何か言おうとしてもすぐに唇をふさがれてしまう。乱された衣服の間からするすると肌の上をなぞる手に眉を寄せれば、見下ろしたシャンクスが苦笑したようだった。
「そんな顔すんなよ」
「この顔は生まれつきだ」
ムスリと答えれば、そうだったな、とシャンクスが笑う。
「赤鼻もそのまんまだし」
「赤っ鼻言うなコラ」
「可愛いって言ってんだよ」
興醒めする事を言うなと睨み付けるバギーにシャンクスはくすくすと笑うとかぷり鼻先に歯をたてた。そうして、またするすると肌の上をなぞってゆく。
その手が不意に止まり、何と見上げたシャンクスはバギーの全身を舐めるように見下ろしていた。
「バギーは?」
「なに?」
「オトコの話」
言われて何の事かと少し考える。
ガキじゃあるまいし、何を気にしているんだか。
「俺の上に乗ろうなんてふざけた男、てめぇだけだ」
「嬉しいな、それ」
「何が」
「俺だけってコトだろ?」
自信ありげに言い切るシャンクスに半ば呆れて自惚れるなと吐いたはずの台詞がまたシャンクスの口内に消えた。その跡は自分のものとは思えないような甲高い声。
「バギー」
ゆるゆると揺さぶる声にハクと喉を鳴らし、見上げればシャンクスが満面の笑みで。
「いただきます」
「ふざけんなっ、あっ」
身体中あふれる快楽にそれ以上言葉は出なかった。




end



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