ほろりと溶けた甘いワナ


ころん。
と、褐色の固まりが手のひらの上を転がった。
これは何だと聞けば、お菓子だ、とシャンクスが笑った。
「チョコレートっていうんだって」
甘いんだぜ。
と、手に持っていたそれを、口の中に放り込まれる。
途端、口の中に独特の香りと甘みが広がり、それが舌の上でとろりと溶けた。
口をもごもごさせながらシャンクスを見返すと、美味いだろ、とまたにこり。
まぁ確かに不味くはない。強いていえば、ちょっと、いやかなり美味いと思う。けど。
「甘い…」
こんな小さな固まりを一つ口に入れただけで、こんなにも口の中が甘ったるくなってしまった。
それを言えば、そこがいいんだよと笑うシャンクスがほら、とまたひとつぶ手に取って。
「もっと食えよ」
と、口の中に放り込む。
舌の上でとろりとトロけたそれは、さっき食べたのとは少し違ったのか、甘みの中にちょっとしたほろ苦さみたいなのがあるような気がする。
同じく口をもごもごさせながら首を傾げると、今のはビター味だとシャンクスが言った。
あっそ、と返し飲み込むと、シャンクスがまた口をあけろとチョコレートとやらを突き出す。
「お前は食わねぇのかよ」
言い返す為に開いた口の中にみっつめを放り込まれ、舌の上で溶けるそれは甘ったるい。
「今のはミルクチョコ、だって」
「だからお前は、」
「俺はいい」
はい、とにこにことチョコレートを差し出すシャンクスに訝しげに眉を寄せるけれど、つい素直に口を開いてしまう。
やっぱり甘い。けど、美味い。悔しいけど。
「俺が食うと意味がなくなるからなー」
「何が?」
「こっちの話」
まだあるぞ、ともうひとつぶ差し出されたそれが、要らないと言う前に口の中に放り込まれる。
ちらりと覗きみた箱の中にはあとふたつぶのチョコレートが残っていて、それがちょっとだけ残念な気がした。



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シャンクスに食べさせられるのは悔しいけど
チョコは甘くて美味しいから食べたい葛藤